VNI鈴凛 過去ログ 04/04/01-30
2004/04/30 みせかけの希望
2004/04/29 ファルージャ・天津・天安門
2004/04/24 かくすればかくなるものと……
2004/04/23 今週の読書欄
2004/04/19 「事実の時代」
2004/04/17-2 天の声にも変な声?
2004/04/17 BREAKING NEWS:日本人2人無事解放
2004/04/16 寛容と忍耐
2004/04/15 《至急電》日本人人質3人無事解放、保護
2004/04/14 目立った者勝ち?
2004/04/11 人質解放へ
2004/04/09 人命は地球よりも重い
2004/04/05 主観・客観・第六感?
2004/04/03 闇夜に烏
2004/04/02 想像力の限界
2004/04/01 ファッション雑誌
ニュースクリップ
(04/17 17:30更新)
★イラクで行方不明になっていた日本人2人解放【NHK】
(04/17 05:30更新)
★イラクの武装勢力、米軍兵士を捕虜に=アルジャジーラがビデオ放送【ロイター=ドバイ発・米国東部時間16:23(日本時間05:23)】
(04/17 04:50更新)
★イラクで米軍兵士1名が反政府勢力に捕虜として拘束か、米軍当局がビデオテープ受け取る=匿名の職員【ロイター=ワシントン発・米国東部時間15:34(日本時間04:34)】
★米英首脳会談、「イスラエル・シャロン首相提案プランを支持」で一致。「シャロン・プランは和平ロードマップからの逸脱ではない」=ブレア英首相。パレスチナはじめアラブ各国は反発、ヨーロッパ諸国は懐疑的【ロイター=ワシントン発・米国東部時間13:40(日本時間02:40)】
(04/16 07:30更新)
★パウエル国務長官、警戒レベル引き上げに伴い、サウジアラビア駐在の外交官の一部と外交官の家族全員に対し退去命令【ロイター=ワシントン発・米国東部時間17:32(日本時間06:32)】
(04/15 23:20更新)
★オサマ・ビン・ラディン氏、「ヨーロッパとは停戦の用意ある」=録音テープで。スペインの爆弾テロにも言及、「我々の血を流すことを止めれば、我々もあなた方の血を流すことを止める」。ヤシン師の殺害については報復を宣言。ヨーロッパの治安当局の分析ではテープは本物と、CIAは分析急ぐ【BBC・世界標準時14:03(日本時間23:03)】
(04/15 22:05更新)
★イラク日本人人質3人解放。武装勢力と交渉つづけたイスラム聖職者協会が保護した後、バグダッドの日本大使館が保護、身柄を確保。アルジャジーラが日本時間21時すぎから速報つづける【NHK】
(04/11 03:50更新)
★イラク武装勢力、フィリピン人3人など計8人の人質解放=アルジャジーラがビデオ放送【ロイター=ドバイ発・米国東部時間14:28(日本時間03:28)】
★イラクの日本人人質は安全のまま拘束続いていると匿名の交渉担当者が日本政府に伝える=共同通信が政府筋として報道。ファルージャ近くにいるとも。アルジャジーラは「撤退要求受け入れなければ24時間以内に人質殺害始まる」と【ロイター=東京発・米国東部時間14:19(日本時間03:19)】
(04/11 03:10更新)
★「3人を24時間以内に解放する。日本国民に頼みがある。政府に対して撤退するよう圧力をかけてほしい」=アルジャジーラのアナウンサーが武装勢力の声明読み上げ【NHK】
(04/11 03:05更新)
★「武装勢力が24時間以内に日本人人質解放」とアルジャジーラが字幕で速報。イスラム教スンニ派の聖職者の説得に応じたと報道【NHK】
(04/09 06:30更新)
★フランスの鉄道で爆弾テロの警告、4万人の足に影響。CIAからテロの情報あるとの警告受けて。捜索後何も発見されず【BBC・世界標準時20:48(日本時間05:48)】
(04/09 03:00更新)
★イラクで日本人民間人3人が人質に。アルジャジーラが犯人グループのビデオを放送、放送から3日以内の自衛隊撤退を要求【NHK】
★ライス・米大統領国家安全担当補佐官が宣誓証言、全米で公開中継。「9.11テロを防ぐ手段なかった」。調査委員長はライス補佐官による報告書の機密扱い解除を要求【ロイター=ワシントン発・米国東部時間13:42(日本時間02:42)】
(04/08 08:02更新)
★イラク・サマーワの自衛隊宿営地で破裂音があったと防衛庁に連絡【NHK】
(04/02 19:10更新)
★自民党の山崎拓・平沢勝栄両氏が中国で北朝鮮高官と接触、政府・国会に無断で。政府与党は強く反発【NHK】
★俳優の中谷一郎さん死去、73歳。テレビドラマ「水戸黄門」の風車の弥七役などで人気【朝日】
2004/04/30 みせかけの希望
(解剖は気持ち悪くて食欲なくしませんか?と聞かれて)
いやあ、私はこれで飯を食ってるんですよ(笑)(
法医学の先生あたりの挨拶)
そういえば、昨年末「映像の世紀」アンコールスペシャルが放送されましたが、えんえん目を覆いたくなるような「悲惨な戦争の記録」、物事の賛否以前に「気持ち悪い」という正直な感想もあったと思いました。
もっとも、
キレイな戦争なんてのはタワゴトにすぎないので、清潔快適なところでワンサイドゲームの爆撃・殺害を、ゲーム映像のように「観戦」しながらああだこうだ言うというのは、根本的に想像力が欠如しているかあるいは思考の放棄をしているとしか思えないんですけれど……。
さて、なんだか振られてもいないのにアクセスが増えてる
(ナゼ?)みたいなので……。
>エルエルさん (4/28)
>■なんとなく不思議な写真特集
いきなり夢ぶちこわすようでアレなんですけれど(笑)。
これの一番上の写真(腹部から手)は、宮城音弥先生の著書
『超能力の世界』で紹介されていて、賞金目的のトリックだと見破られたものです
(「意識的サギと無意識的サギ」)。
この写真、もともと「死んだ人の霊が乗り移ってくる」霊媒さん
(自称)がいろいろ見せたなかで公開された写真で、トリックが解明される前は「自分に乗り移った霊の手が、ロウに指紋を押した瞬間!」というフレコミ。
……これのトリックの謎明かしもさることながら、一般的にいろいろと分析が加えられているので、詳細は『超能力の世界』をどうぞ♪
あと、「火星語」についても、フルールノアが仔細に検討した症例が紹介されていますね。
そういえば、先日「イラク戦争で米兵の棺を撮影した従軍カメラマンが解雇」という報道がありました。
ベトナム戦争で、「写真や映像のせいで……」という反省が生まれた米軍当局、湾岸戦争以降メディアの「利用方法」に気を使っていて、棺や死体は撮影不可にしているそうです。
ただし、イギリスに本社があるロイターやBBCなどの外国メディアには押し付けることもできず、アメリカ国内のメディアから目的を限っても実際の意味がない、だいたいメディアを規制するというのも……というような反発も出ています。
この問題となったカメラマンの場合は、撮影したカメラマンも、写真を掲載した新聞社も、「米軍が立派に仕事をしているのを伝えたかった」と言っていますが、目的がそれでもダメだと。
まさかとは思うけど、ファルージャの停戦が行ったり来たりしてるのって、ファルージャの殺戮の結果が大々的に報道されないように、時間稼いでるんじゃないでしょうね?
>詩子さん (04/30)
>えっと……もしかして新手の国民への情報公開風味……ですか???
そういう高等テクニックで「内部告発」してくれるとか、あるいは情報戦略としてリークに使うとかなら救いもありそうですけど……。
>是非官公庁の方々(に限ったコトではない風味ですけど)、味方の軍曹(システム管理者)から教育を受けるコトをお薦めする風味です。
あ、それは異議ありです(笑)。
だって
教育できる軍曹いそうにないですもん、官公庁
(こらこら)。
「霞ヶ関精神注入棒」イコール「札束」みたいな人たちですし……。一度「敵」からだだーっと銃撃食らわないと目が覚めないんじゃないかな?
というわけで……。
>・ひみつぶんしょは、おうちにもってかえらないようにしましょう。
>・Winny(うぃにー)などの、P2Pソフト(ぴーつーぴーそふと)は、ひみつのぶんしょがはいっているパソコン(ぱそこん)でつかわないようにしましょう。
>・っていうか、つかうな。
>とか、バカチンにも分かりやすく教育してあげるのが最初なんじゃないカナ??
よりも、同じひらがななら、
「ぼうえいちょうの ばかどもえ」
「わしらもうあきてきた こいずみゆるしたる じえいたいもイラクいってええ」
とか、ウイルスかなんかでいきなり嘲笑されてみたほうが、彼らにはいい経験になりそうですよ(苦笑)。
……「グリコ・森永事件」記憶に残ってる世代は、すでに少数派かもしれないと書いてから気づきました(笑)。
2004/04/29 ファルージャ・天津・天安門
♪ブラック・コーヒー、飲むときも飲むときも〜いつでもいつでも彼は 左きき〜 あなたの真似してみるけれど〜わたしの右きき直せない〜♯(
「アイドル時代を知っている」というと世代がバレるあたりの挨拶)
あ、「アイドル時代を知っている」と思いっきり自白しちゃったのは、
『怪盗セイント・テール』でおなじみの立川恵先生ですからね(笑)。
と書き出してから、今日は「みどりの日」で祝日だったことに気づいて、
♪朝です、窓です、光です
小鳥の唄に目が覚めて 若葉あかるい街並木
みんなでみんなで木をうえて みどりうれしいこの町だ
(中村利器作詞・古関裕而作曲「みどりの歌」=昭和23年NHKラジオ歌謡)
にしとけば良かったかとも思うんですけれど……。
でもこの歌の3番、
♪松です、杉です、檜です
(中略)
みんなでみんなで木を植えて みどり嬉しいこの国だ
というのは、国民病となった「花粉症」を代表して異議を唱えたいかも(笑)。
この十数年で急に花粉症が増えたのは、終戦後の焼け野原に、比較的手がかからず利益に直結するスギを植えまくったのも原因の一つだといわれていますから……。しかも時季が重なるスギ・ヒノキのダブルパンチで苦しんでいる患者さん多いですし(苦笑)。
それはともかく、文字通りの取り繕いようがないほどの「焼け野原」に直面して、「みどり」への待望は強くあったことでしょう。
♪あたらしい空の下 かがやくみどり
さわやかに手足のばせ 土ふみしめよ
ラジオとともに すこやかな手足
この広い土にのばせよ それ、一、二、三
(藤浦洸作詞・藤山一郎作曲「ラジオ体操の歌」)
復興まで数百年はかかるという予言・予測さえあったものを、教育水準などの無形のインフラや時代にも助けられて、歴史的にも稀なスピードで経済発展を遂げます。
そこに登場したのが……
みなさん、東京や大阪や名古屋は、確かに非常に混乱をしておりますが、まだまだニッポンには、たーくさん土地がありますよ。
それを新幹線に結べば、高速道路で結べば、飛行機で結べば、たいしたことはないじゃありませんか。
みなさん、昼間から、朝から晩まで、ビルの中にだけ、マッチ箱の中にだけには住めないんです。
そうすれば、周りに少しは緑のあるところを、考えねばどうするんですか。
という「列島改造論」でした。
映像資料に残るこの演説を見ると、確かに「コンピュータ付ブルドーザー」と呼ばれただけの、説得力とはまた違った気圧されるところがあるようにも思いますが……。もっとも、池田勇人の
「10年で倍にするには、毎年7.2%、こういうことなんです」にもそういうパワーは感じますから、厳しい左右対立のなかにあった当時は、政治姿勢への是非はともかく、数字や方針を他人に丸投げで済ますような人では到底務まらなかったのかもしれません。
……って、何の話でしたっけ?
(こらこら)
標題と挨拶まで書いたところで、さてと書き起こすはずだった本文忘れちゃうと困りますね(苦笑)。逆に本文が先に上がっても、標題と挨拶が出てこなくてボツになることもあるんですけれど……。
挨拶はともかく、標題は……。
米軍、再び武装勢力攻撃 ファルージャ停戦危機に【共同通信 /Yahoo】
【バグダッド29日共同】AP通信によると、イラク中部ファルージャで28日夜、駐留米軍がAC130攻撃機などを投入、武装勢力に対する空からの攻撃を再び実施した。米CNNテレビは、ファルージャ北東部で米軍機が目標を攻撃、爆発音とともに煙が上がる様子を中継で伝えた。
ブッシュ米大統領は28日、米軍は「いかなる必要な手段も取る」と述べ、総攻撃も辞さない姿勢を示しており、11日から続いている停戦は崩壊の危機に立たされている。
ファルージャを包囲する米海兵隊の現地司令官はAP通信に対し、米軍とイラク治安部隊との合同パトロールが30日まで延期されたと述べた。
合同パトロールは、米軍が武装勢力の重火器を摘発し、市内の治安を回復するのが目的。しかしパトロール隊が武装勢力側に襲撃される危険も大きいため、実施に踏み切れずにいる。(共同通信)
[4月29日8時22分更新]
膠着状態が続いていたイラク・ファルージャ情勢、報道でご存知のとおり米軍が街を包囲しているわけですが、とっさに連想したのが「天津・イギリス租界封鎖」事件でした。
……という前に、「租界」
(そかい)について解説が必要かもしれません。
「租界」は、「アジアの国際都市」「魔都」と呼ばれた上海が有名ですが、清国滅亡の前後、欧米列強の植民地支配で分け取りにされた中国で、中国の領土でありながら外国の支配下に置かれた居留地です。上海の英国租界といえば、上海にあるのに、英国人のための英国による統治が行われていたわけです。
かなり正確さを犠牲にするのを覚悟で乱暴に説明すれば、現在各国が置いている「大使館」は街の一角を占めているだけですが、あれが街全体を覆っていて、そこの街には警察官も税務署もアンタッチャブル、というようなイメージでしょうか。
……って、現代ではイメージがしにくいと思いながら、
よくよく考えたら現在の日本にも似たようなものがあって、沖縄の「米軍基地」なんか、犯罪者が逃げ込んじゃうと手出しも大変というあたり、まるっきり違うとは言いにくいんですけど(苦笑)。
また話が脱線するので戻しておきますが(笑)、この「租界」を列強各国が分け取りにしたのが、中国の人民にとっては非常に屈辱的な植民地支配でした。有名な「犬と中国人入るべからず」も上海の話です。
その「欧米列強のアジア侵略を許すな」をスローガンに立ち上がったはずの日本がやったのは、まるっきり同じやり方で、しかも満州という巨大な土地まで分捕ったために話が複雑化します。
それはまた別の話になるので今日はこれもパスしますが(苦笑)、問題は各国がうじゃうじゃと「うちの租界」を作ってしまうと、「国際都市」「魔都」の言葉どおり、各国の対立がそのまま都市の中に持ち込まれることになりました。
天津
(「甘栗」で有名ですね)のイギリス租界問題というのは、親日系新聞社の社長が暗殺され、その犯人がイギリス租界に逃げ込んだため、日本がイギリスに犯人の引渡しを要求、かねてより日本の中国支配政策に危機感を持っていたイギリスが突っぱねたために急速に不穏な情勢となった事件を言います。
ポイントは、租界では外部の治安警察権が及ばないということで、日本軍はイギリスの租界を封鎖、軍事力によって外部との通行を制限し、検問を行うという無謀な策に出ます。
日本側で犯人引渡交渉に当たったのは、当初は知英派で知られた本間雅晴中将。のちに太平洋戦争で「バターン死の行進」を行い、戦後、その責任を問われ戦犯として銃殺刑になりますが、このときは穏健な路線を取り、そのためにかえって日本国内からの非難を浴びます。
当時のイギリスの駐日武官が、「本間中将に対し、おなじ日本人から加えられる不当な攻撃を聞くのは私にとって堪えがたいことだった」とまで書いていることからも、交渉相手のイギリスではなく日本からの「軟弱」「腰抜け」の罵声がすさまじかったことが見えます。
本来の「犯人引渡し」はもはや口実となりはてて、反英の勢いだけが暴走した情勢になっていたことに、あまり情報を知らされていない天皇も憂慮し、「いたずらに英国を刺激することなく、なるべく速やかに封鎖をとき兵を引きあぐるようにせよ」と参謀総長に指示しています。
この問題は大変に難航して、最終的には東京での外交交渉でイギリスに大幅な譲歩を強いる代わりに、今度はアメリカから通商条約の延長拒絶を通告されて、資源の輸入が止まる、次は石油だ……と「太平洋戦争への道」を突っ走る結果になります。
ただ、ここで「封鎖」一点張りだったのが、一応は外交交渉に移せたのは、イギリスの出方の変化ではなく、
ほとんど日本国内の「お家の事情」みたいなもので、次のやり取りが打開のきっかけになったといわれます。
本間中将の上で封鎖の指揮をとる、参謀長山下奉文中将と参謀副長武藤章少将に対して、参謀本部の堀場参謀が説得に出て、
堀場はみずからが起案した天津租界問題の解決案をもっていた。それは封鎖を解き東京での外交交渉にのせるというものである。
(中略)
山下が、にこにこしながら、
「封鎖封鎖と大げさにいうな。あんなものは、さながら、椀の中のなめくじに塩をつまんでかけたようなものだよ」
というのを、堀場はすばやくうけとめた。
「大兵力を統率して武勲赫々たる方面軍が、なめくじに塩と、たかが一租界を封鎖で強硬になっているのはいかがなものでしょう。それによって抗日運動に戸をたてても、それがかえって租界内の民衆にとって、いかに生活を脅かす苛酷な処置になるか、閣下はお考えになったことがありませんか。この措置は、わが軍の襟度を傷つけるのみで、ほかになんの益がありましょうか」
(半藤一利『ノモンハンの夏』)
山下奉文中将は、のち比島決戦
(フィリピン)で、「レイテ決戦」に反対して「ルソン守備」を主張しながら命令で強要され大敗し、戦後、フィリピンでの虐殺行為についてマニラの戦犯法廷で絞首刑。同じく武藤章中将もフィリピンで山下とともに敗戦を迎え、軍務局長だった開戦時の責任を問われ東京でA級戦犯として絞首刑。
ついでに書いてしまえば、軍務局長時代の武藤に対して、「不拡大」方針をめぐってやりあったのが「満州事変の張本人でありながら」2.26事件では「この時の態度は正当なものであった」
(『昭和天皇独白録』)といわれた石原莞爾でした。「不拡大」を主張する参謀本部・石原作戦部長の激怒を、陸軍省・武藤軍務局長が「満州事変のときの閣下と同じことをしているのです」と軽くかわした話も有名です。
その石原は、東条陸相と合わず、早い段階で失脚、戦後すぐにがんで死にますが、死の直前の東京裁判の尋問では得意の毒舌を発揮し、「戦犯第一号はトルーマンだ」などと放言して海外記者団に受けがよかったといわれます。満州事変のときに石原プランを支持した板垣征四郎はのち陸相、東京裁判でA級戦犯として絞首刑。
……
非常に少数の人物が入れかわり立ちかわり登場しては、思い放題に引っ掻き回してしまったのが昭和史、と思いたくなるのも無理はなさそうです。
とくに極東軍事裁判までは、同じ人物があちこちに登場しては歴史の歯車を動かしてゆくような場面が多くありますから、
よく海外のミステリ小説を読むときに言われる「聞きなれない人名が出たり入ったりして分かりにくいので、最初に出てきたときにメモを作る」というのと同じような対策をとると、よほど読みやすくなるかもしれません。
本格的には、それこそカードをとっていく
(たとえば京大式カードとか)、あるいは手近のエディタに項目打ち込んでいくだけでも、しっかりした読み方にはなるでしょうが、そこまでせずに気楽に読むにしても、この「少ない固有名詞があちこちで登場」については、最初からまるまる覚えようとするとかえって敷居が高くなるように思います。
もっとも、著者の評価の問題が絡んで事実さえゴチャゴチャしがちな分野なので、やたらと数を読めば勉強になるかというと、そうとも言えません。
本当はそういった基礎の部分は、学校教育で習っているはず、というのが
タテマエですが、実際は教科書の内容問題以前に、
そもそもそこまで授業が進まない、頑張っても明治半ばあたりで学年が終わってしまうので、何度「日本史」「世界史」をとっても昭和までは行き着かない、という現実問題もよく指摘されます。
「教科書検定問題」に際して、
「教科書を書く先生がどう書いたって、『ゆとり教育』の時間割では、途中すっ飛ばさない限り、問題の場所まで行き着かない」という
ヤケッパチみたいな現場の声もありました(苦笑)。
それでは「最初のほう」に来る古代はしっかりやれるのか、というと、それはそれでお寒い実態があるようですが……。
結局、これは歴史に限らないんですが、「お気に入り」の学者を見つけて、まずそこを窓口にして入ってみて、引用文献などから広げていくという丸谷才一氏の勧める方法が、もっとも現実的なようです。
……ただしこれ、「お気に入り」の見つけ方間違うと
大惨事もいいところで、書いているうちに本線見失う書き方
(一番ひどい実例がウチじゃないかという気もしますが(笑))に引っかかると、世界が広くなったんだか粗くなったんだか分からないという羽目になるかもしれません。
『ラ・ロシュフコー箴言集』が引用しているからと
『ギリシア奇談集』読み始めたら、元の目的が何だったか分からなくなったという経験があるものですから……ってこうなると個人的な嗜好の問題かしら(笑)。
ひいきの書評家をつくれと言いましたが、この場合も、ひいき筋の学者を持つことをお勧めします。学者をひいきするのは、タレントをひいきするより、はるかに長持ちする(笑)。歌舞伎役者は別にしても、タレントは二年か三年で消えてゆくでしょう。それにくらべれば、学者は、一人発見したら二、三十年、いやもっと持ちますからね。
たとえば宮崎市定さんの本、これなんかほんとうに長持ちでしょう。それから大野晋さんの本、これも長持ちする。そういうふうにひいきの学者を決めて、その人の本は必ず読むようにする。すぐに読まないまでも、一応は買っておいて、気が向いたときに開けてみる、それをぜひお勧めしたい。
(丸谷才一『思考のレッスン』)
と書いておいて、「先生異議あり!」じゃないですけど、確かに
宮崎市定先生の著書、内容は長持ちはしますが、
買うだけでもかなり大変ではと思います(笑)。
私は昭和史については、半藤一利氏や秦郁彦先生の著書を多用していますが、半藤一利さんの著書は文庫になっていても「必ず」買っておくのはシンドイですよ……費用の問題よりも先に、置き場所の問題と
(これはウチだけかしら)、本屋さんにもあまり置いてないこともありますが……文春文庫さん、元顧問をされたくらいの方なんですから、もうちょっと置いてくださいな(笑)。
日本におけるイスラム学のパイオニアにして碩学の
井筒俊彦先生も「ひいき」したいところですけれど、こちらも揃えるだけでも大変ですし、読み流せばいいところをマジメにカード取るつもりで読んだら圧倒されて負けちゃいます(笑)。
あと、数学者の矢野健太郎先生も絶版・品切れ多いんですよね……と思って見てみたら、同名異人の矢野健太郎さんが大量にヒットしちゃいます(苦笑)。
……などと言ってみても、「神城凛ちゃん」(in「まぶらほ」)でお越しのお客様にとっては、数学の矢野健太郎先生よりも、ウチが検索の邪魔だと怒られるような気がしますが……これでも数減らすように努力してるんですが(苦笑)。
2004/04/24 かくすればかくなるものと……
我が国民の感情に過ぎ、事に激しやすき性質に対しては、我々の名誉感に責任がある。もしまた外国人によりて往往非難せらるるごとき自負尊大が我が国民にありとすれば、それもまた名誉心の病的結果である。(
持ち上げるならきちんと読んで欲しい『武士道』あたりの挨拶)
人質事件で陰謀論いまだ止まず、のようですが、これはだんだん面倒になってきますね(苦笑)。
昭和史の一番最初のところに、「田中メモリアル」というのがあります。あまりにも荒唐無稽に近い陰謀論なので、日本の学者は自虐史観の論者でさえも特筆しないため、すでに忘却のかなたになりつつあるシロモノですが、
「世界を征服せんと欲すれば、必ずまず支那を征服せざるべからず」の名フレーズが有名で、偽書の多いなかでもこれだけが百科事典にまで掲載されたといわれます。
「田中上奏文」とも呼ばれるこれは、田中義一首相
(兼外相)が、この名フレーズにあるように中国支配の段取りを上奏したという陰謀論の根拠になるものですが、「福岡に師団はない」「『宮内大臣を経て上奏』と称するが上奏は内大臣の所管」など記述の誤りが多く指摘されています。
あまりにもつくりがズサンで、極東軍事裁判
(東京裁判)でも陰謀の立証に使おうとしたものの、途中で引用を諦めたぐらいのものですが、戦後もソ連・中国では本物という見方が強かったとされています。
誤りが多くても本物だと言い張る根拠は、1932年国際連盟理事会で
「この問題の最善の証明は、実に今日の満州における全事態である」とした中国代表の言葉に代表されるように、陰謀論の出所・認否云々よりも、
現実の事態がそうなってるじゃないか、という論法でした。
現実に陰謀をもって始まった昭和史ほどではないにせよ、今回の人質事件についても、事実を調べることも検証することもせずに、簡単に「最善の証明」とばかりに安直なシナリオに飛びつくのは、田中上奏文問題と同じ類の「陰謀史観」とは言えないでしょうか。
陰謀史観は、
「ルーズベルトは真珠湾攻撃を(暗号解読で)知っていたはずだから、日本側の通告の遅れは問題ではない」などでも見られる議論ですが、結論を先に持ってきたくて史実の検証を怠る人が、「自虐史観」「自慢史観」と分かれて水掛け論を展開するのは……まあ、「火事と喧嘩は江戸の華」式に対岸から見ている分には、見モノとして面白いかもしれません(笑)。
ただし、
あまり近寄ると伝染の危険があるので、P4レベルなみに隔離してガラスの外から眺めるに越したことはなさそうですが(笑)。
「人命は地球よりも重い」は、ダッカ・ハイジャック事件での福田赳夫首相
(当時)の「超法規的措置」で有名にはなりましたが、もともとこれが初出ではありません。
最初にこの言葉が有名になったのは、「死刑制度は憲法の禁止する『残虐な刑罰』にあたり違憲ではないか」と争われた戦後の訴訟で、最高裁判決
(昭和23.03.12.)が、
生命は尊貴である。一人の生命は、全地球よりも重い。
として尊重すべきではあると認めた上で、
死刑は、まさにあらゆる刑罰のうちで最も冷厳な刑罰であり、またまことにやむを得ざるに出ずる窮極の刑罰である。
と述べて、
すなわち憲法は、現代多数の文化国家におけると同様に、刑罰として死刑の存置を想定し、これを是認したものと解すべきである。言葉をかえれば、死刑の威嚇力によつて一般予防をなし、死刑の執行によつて特殊な社会悪の根元を絶ち、これをもつて社会を防衛せんとしたものであり、また個体に対する人道観の上に全体に対する人道観を優位せしめ、結局社会公共の福祉のために死刑制度の存続の必要性を承認したものと解せられるのである。
と結論したものです。
ただし、ヤミクモにどんな方法でやってもよいということではなくて、
ただ死刑といえども、他の刑罰の場合におけると同様に、その執行の方法等がその時代と環境とにおいて人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には、勿論これを残虐な刑罰といわねばならぬから、将来若し死刑について火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでの刑のごとき残虐な執行方法を定める法律が制定されたとするならば、その法律こそは、まさに憲法第三十六条に違反するものというべきである。
という留保条件もきちんとついていますけど。
死刑制度そのものについても、最高裁裁判官を務めた団藤博士など有力な反対論がありますが、そういえば内閣書記官長として終戦に奔走した迫水久常
(戦後参議院議員)が、戦時中に「統制経済違反は、スターリンはもちろんヒトラーのドイツでも死刑にしているから、よろしく死刑にすべし」という強硬意見に対して、元来死刑反対であったのでついに退けた、と書いています
(『機関銃下の首相官邸』)。
逆に痛烈に死刑反対論を皮肉っているのが、
「無期刑は無実の罪の吹きだまり」論で、凶悪犯罪だが、いまひとつ自信はないというときに限って、裁判官は一段階落として無期にしてしまいがちだ、という指摘です。
2004/04/23 今週の読書欄
「誰か来て〜!!(絶叫)」(
単語だけで恥ずかしがっているところを金田朋子さんに追い討ちかけられて動揺しまくる松来未祐さんあたりの挨拶)
前回の更新は、なんだかムチャしちゃいました(苦笑)。
というか、国際的には、イラク情勢
(とくにスペインから始まった各国撤退の波紋)も確かに大きなトピックスですが、「ハマスのランティシ師をイスラエルが殺害」も大変な事態になっているんですけれど、なんだか日本では文字通り「海の向こう」みたいな扱いになっていますね。
海外ドラマ「ザ・ホワイトハウス2」が終わり、「Radio TLSS」も終わり、今季ラテ欄ネタがなかなか……という昨今です。
というかウチでラテ欄ネタ外すと中東一色になっちゃうのはなぜだか不明ですが(苦笑)
……というわけで、久々のラテ欄・読書欄に持っていって、少しでも「中東」やら「国際部」色を薄めようと苦闘してみます(笑)。
生天目仁美さんと猪口有佳さんの今季からのラジオ新番「仁美と有佳のどらごんデンタルクリニック」、番組の設定とはいえ、リスナーの投稿を「カルテを送ってきてください」と言うのにはすっごい違和感が……あれは患者さんが書いてくるものじゃないだろうって(笑)。
まあ、もともと「カード」
(英語)も「カルタ」
(ポルトガル語)も、「カルテ」
(ドイツ語)も、同じ意味なのに各国語で発音が違うのを、そのまま外来語で輸入したときに各分野でそのまま受容してしまっただけなので、まるっきり間違いということはないんですけれど。
豊口めぐみさん・松来未祐さんのラジオ新番「めぐみゅうの神楽坂ハッピーチューナー」、リスナーからの指令が「干し椎茸を口の中でもどせ」だったり、「フランスパンの上にウナギを合わせる」だったり、なんだか
悪食番組になっちゃっているような。
テレビでは、なんだかえらく久しぶりに日本のドラマを見たかも、というのが、福井裕佳梨さんゲスト出演目当てで見た
「ヴァンパイア・ホスト」(テレビ東京)でしたが、ホラーなのかコメディなのかよく分からない設定でした。
「福井裕佳梨ちゃんは、やっぱりあんな子ですね」とは某ネットラジオでの桑谷夏子さん・川澄綾子さんの一致した見解でしたが、声の出演とドラマだと随分印象違うかなあと。
……って、
今季ホントにラテ欄ネタ少なっ!(苦笑)
コレはしばらく
(もしかしてアメリカ大統領選挙まで?)ガチガチの国際部で行け、という思し召しでしょうか……。
嘆いていても仕方がないので、読書欄に行きます(笑)。……新聞でいう「スポーツ面」が存在しない以上、こっちで比率下げなきゃ(笑)。
平山健太郎・元NHK解説委員の新著
『ドキュメント・聖地エルサレム』を求めに書店に行ってみたんですが、ネット書店と違う衝動買いの恐怖が。なぜ目的のものがないからって
『昭和史 1926−1945』やら
『中国古代の科学』を買ってきちゃったのかよく分かりません(苦笑)。
そういえば先ほども話題に触れた福井裕佳梨さん、先月
アサヒ・コムの「BOOK」に出ていましたが、多忙なお仕事のなかで「ちゃんとした本は月に3,4冊」というのは確かに読書家のほうに入ると思いました。まあ、イメージ的
(事務所的)にも、ここで取り上げているような本は上げるわけにはいかないでしょうけど(笑)。
『吸血鬼幻想』なんか読んでたらちょっと引きますよね(笑)
それにしても、半藤一利氏の著作は随分紹介してきましたが、
『昭和史 1926−1945』は帯の「著者渾身の語り下ろし」にたがわず、すさまじい内容でした。
当代一流の現代史家ですが、文藝春秋の専務・顧問まで務めた経歴からも分かるように、決して「自虐史観」の立場の人ではないんです。にもかかわらず、「無責任国家」に対しては舌鋒鋭く徹底的な批判を加えています。
とくにこの新著は「語り下ろし」として、昭和史になじみの薄い若い読者のために戦後世代の編集者に「お話」したためもあるでしょうが、それにしてもそこまで言いますか、というような記述があちこちに……。
こっちが先だというようなみっともないことは言いませんが、期せずして
「近衛文麿≒小泉首相」で一致を見ると、なんだか嬉しくなっちゃいます(笑)。
いえ、日本の先行きに少しでも期待をつなぎたい方には、全然喜べないところでしょうけど……。
(防空大演習について)
桐生悠々という信濃毎日新聞の論説委員が「関東地方防空大演習を笑う」という記事を書きました。これは今考えるとまったく当然のことを言っているのですが、当時はものすごい反響で、陸軍がかんかんになってたちまち発禁となり、桐生は責任を取らされる結果になりました。その記事は、「だいたい敵の飛行機が日本の上空に来るという状態になったらもう日本軍の大敗北そのものではないか。紙と木だけの東京の街はぽかんぽかんとやられてどうしようもなくなってしまうではないか」といったことを述べて(中略)
昨今、小泉内閣で有事法制が問題になっていますが、敵が攻撃してきた時に民衆をいかにして守るかという議論を今時やっているわけです。考えれば、細長い土地の真ん中に山脈が走っているこの国は、どこの地方でもたいてい海岸線から車で一所懸命に走れば一時間や二時間で山に届いてしまうくらい狭いんです。そこに敵を迎えて民衆をどうのと言っている暇など実際はないんです。ところがそんなことをムキになって議論している。これは昭和八年の関東地方防空大演習と同じようなことじゃないでしょうか。歴史は繰り返すと言いますが、相変わらず懲りずにやっているなという感じです。敵がやってくる前に撃退しなければならない、その前にまず外交的な努力によってそういう事態が起きないようにすることが大事なのに、どうも国会ではいちばん肝腎の国家的政略や戦略が議論されていないようです。桐生悠々がいみじくも言ったとおり、だいたい日本の上空に敵機が来て爆弾を落とすようなことになれば、日本は勝てるはずないじゃないかというのは、非常に妥当な意見だと思わざるを得ません。
(「第四章 軍国主義への道はかく整備されていく」)
(三国同盟について)
ここでの問題は、日独伊三国軍事同盟を結んだ場合、ヨーロッパ戦争にアメリカが参入してドイツと戦うことになった際、日本も即座に自動的にアメリカと戦争することになるのかということでした。松岡外相の説明によると「そんなことを条項に書く必要はない。自動的に参戦、ではなく、自主的決定に委ねる、情況を見て日本は自主的に判断する、というように書けばいいのだ」とのこと。今日、テレビで国会の予算委員会を見ていましたら、イラクへの自衛隊派遣について小泉首相が「それはその時の情勢をみて自主的に決める」と答えていましたが、これと同じなんですね。つまり軍事同盟といっても“自主的”という条件付きなのだから安心という説明を、不思議なくらい海軍は信じてしまうんです。
(「第九章 なぜ海軍は三国同盟をイエスと言ったか」)
(日米諒解案について)
さてここで、残念な話になってしまうのです。近衛さんが本当にリーダーとしての決断ができればよかったのですが、それができない人だった。さながらどこかの首相のように「丸投げ」がお好きな方でしたから、「松岡外相がまもなく帰ってくる。したがって、松岡君の意見も聞いたほうがいいのではないか」とくだらないことを言い出したのです。
(「第十一章 四つの御前会議、かくて戦争は決断された」)
(開戦前夜の日米頂上会談)
天皇陛下はこの事態に心底から参っていました。そこで近衛に真意を問いただすと、「ルーズベルトとの直接会談を行うことによって問題解決を図る決意です」と明言したため、さらに八月七日、「この際、米大統領との会談は急いだほうがよいだろう」と督促します――天皇は、まだ近衛さんに全般的な信頼を置いていたんですね。私などは調べれば調べるほど、近衛はこりゃだめな宰相だと思うのですが、昭和天皇はそうじゃなかったんですねえ。とにかく、どこかの総理大臣と同じように、近衛さんは言うことだけは国民受けするほど立派ですが、積極的には動かないお方のようで、何もしないままでべんべんと月日がたっていくわけです。
(「第十一章 四つの御前会議、かくて戦争は決断された」)
繰り返しますが、「南京大虐殺」についても、中国側の「30万人」の数字を鵜呑みにはしない、「なかった」論にも明確に否定する、非常に冷徹な分析をする方です。その史家が、ここまで言ってしまうというのは、現状に対して「この道はいつか来た道」という危機感がかなりあるのでは、と思わされます。
本書の結論というべき最終章、「三百十万の死者が語りかけてくれるものは?」では、舌鋒はさらに鋭さを増します。
この十五回にわたる授業を終わるに際して、では昭和史の二十年がどういう教訓を私たちに示してくれたかを少しお話してみます。
第一に国民的熱狂をつくってはいけない。その国民的熱狂に流されてしまってはいけない。ひとことで言えば、時の勢いに駆り立てられてしまってはいけないということです。熱狂というのは理性的なものではなく、感情的な産物ですが、昭和史全体をみてきますと、なんと日本人は熱狂したことか。
(中略)
二番目は、最大の危機において日本人は抽象的な観念論を非常に好み、具体的な理性的な方法論をまったく検討しようとしないということです。自分にとって望ましい目標をまず設定し、実に上手な作文で壮大な空中楼閣を描くのが得意なんですね。物事は自分の希望するように動くと考えるのです。
(中略)
三番目に、日本型のタコツボ社会における小集団主義の弊害があるかと思います。陸軍大学校優等卒の集まった参謀本部作戦課が絶対的な権力をもち、そのほかの部署でどんな貴重な情報を得てこようが、一切認めないのです。軍令部でも作戦課がそうでした。
(中略)
さらに五番目として、何かことが起こったときに、対症療法的な、すぐに成果を求める短兵急な発想です。その場その場のごまかし的な方策で処理する。時間的空間的な広い意味での大局観がまったくない。複眼的な考え方がほとんど不在であったというのが、昭和史を通しての日本人のありかたでした。
膨大な引用になりましたが、500ページを超える大部の著作ですが、著者特有のクリアな語り口で、しかもとくに戦後世代のために読み聞かせるように言葉を選んでいますから、一気に読み終えることができると思います。
難しいことを難しく書いたり、あるいは逆に「内容を平易に」イコール「薄く軽く簡略化」とカンチガイする向きが多くて閉口させられることが多いのですが、
本当の専門家でなければできない「難しいことをやさしく書く」ことに成功している良書だと思います。それでいて、現代と遠くはなれた“昔ばなし”ではないと、痛烈な指摘はまったく歯に衣着せずに徹底的になされています。
……ここまで徹底的にやられてしまうと、希望を持ちたい方には厳しすぎるかもしれませんし、そうでなくても丸谷才一氏の「新しいことを言えないなら書く必要はない」式に「付け加えることはありません」で終わってしまうんですが……。Amazonでいえば星5つの評価をしたい、お勧めの一冊です。
……頑張ってたまにはソフト方向に持っていこうと思ったんですけど、
大失敗だった模様です(苦笑)。
ついでなので開き直って、自戒を含む部分を引用してみます(笑)。
(独ソ接近に気づかなかったことについて)
それにしても政府や軍部の「見れども見えず」は情けないかぎりです。(中略)
これは何もあの時代にかぎらないのかもしれません。今だってそうなんじゃないか。なるほど、新聞やテレビや雑誌など、豊富すぎる情報で、われわれは日本の現在をきちんと把握している、国家が今や猛烈な力とスピードで変わろうとしていることをリアルタイムで実感している、とそう思っている。でも、それはそうと思い込んでいるだけで、実は何もわかっていない、何も見えていないのではないですか。時代の裏側には、何かもっと恐ろしげな大きなものが動いている、が、今は「見れども見えず」で、あと数十年もしたら、それがはっきりする。歴史とはそういう不気味さを秘めていると、私には考えられてならないんです。
(「第八章 第二次大戦の勃発があらゆる問題を吹き飛ばした」)
怖いほど時代を見ている、と思わされます。
個人的にどきっとしたのは……
ところが、日英同盟を廃棄して昭和に入ってから、イギリス、ひいてはアメリカに対する感情が、悪化してくるのです。どうしてか。それを書いた文書があります。少し先になりますが、昭和十三年(一九三八年)九月に海軍軍令部がまとめた「対英感情は何故に悪化したか」という、日本海軍独自の分析です。長いのでまず「間接的な原因」を簡単にわかりやすくまとめますと、(中略)
三、自国の過去の植民地政策などはまったく棚に上げて、日本がやっていることをことごとく侵略・不正行為呼ばわりし、「ロイター」その他の新聞を総動員して世界の世論を反日に導いている
(「第七章 政府も軍部も強気一点張り、そしてノモンハン」)
こんなところで「ロイター」と出会うとは思いませんでした(笑)。
まあ、これは当時の日本側の都合のいい理屈ですから、ロイターにしてみれば反論もあるでしょうけれど。
2004/04/19 「事実の時代」
「材料だ、材料だ、材料だよ! 粘土がなくて煉瓦が作れるものか!」「資料もないのに、ああだこうだと理論的な説明をつけようとするのは、大きな間違いだよ。人は事実に合う理論的な説明を求めようとしないで、理論的な説明に合うように、事実のほうを知らず知らず枉げがちになる」(
家庭教師志願の女性の身の上相談から王国のスキャンダル対策まで何でも手がけるホームズ先生あたりの挨拶)
怪情報にひとつひとつ反論してゆくのも、「資料もないのに……」とホームズ先生に怒られそうですが、
BBSにいただいた内容から、現時点で明らかにおかしいと思われる点を、今後の記録のために列挙して検証しておきたいと思います。
>・犯行声明文に宗教的修辞、「アルカイダ」等の表現がない。
宗教的修辞というのは、コーランの引用といった「アルカイダ」の犯行声明の特徴を言うんでしょうが、「これがないこと」自体が、今回の武装グループの特徴だと考えられます。
つまり、アルカイダのように宗教的トレーニングを受けているイスラム過激派テロ組織ではなく、それほど宗教色の強くないグループではないかと見られます。
この違い、乱暴に日本の例で言えば、
「神武天皇以来の悠久の歴史を誇りたがる極右テロ組織」と、
「右翼政治団体を装って金品を要求する食いっぱぐれた暴力団」の違いに近いのではないかと。
今回の事件そのものを見ても、アルカイダのように長期間潜伏して綿密に計画を立てていきなり実行してみせるという手法からは程遠いものです。
イラク戦争に関わっていてリスクを持っていたスペインでさえ、列車爆破テロは予想外に近かった
(情報機関がどこまで把握していたかは別ですが)わけですが、そういったテロ組織の計画的犯行とは、今回の事件は本質的に異なっているように見えます。
「食いっぱぐれた暴力団」というと語感が悪いようですが、ファルージャの実態を考えると、今回の事件は、追い詰められてから手持ちの武器をかき集めて大慌てで計画したような印象を受けます。声明文に技巧を凝らしていない、まして後から解放された2人の事件では文書による声明さえ用意できていなかったことを見ると、かなり急ごしらえの組織が急いでやったように考えられます。
また、アルカイダとのつながりを示さないことについては、イスラムの主流には「アルカイダ」は支持されていないことを挙げておく必要があるでしょう。「9.11アメリカ同時多発中枢テロ」の際に、「恐ろしいことだ」と真っ先に声明を発表したのはパレスチナ自治政府のアラファト議長でした。
「アルカイダのような連中と一緒にされてはたまらない」という感覚が、イラクの武装勢力にあってもまったく不思議はありません。
>・声明文の日付が西暦で書かれている。
シーア派の過激派勢力や、アルカイダのような原理主義
(この用語は本来誤りなので使いたくないのですが暫定的に)グループの場合は、イスラム暦を使うのが普通ですが、バース党(フセイン政権)支配下のイラクでは、他のイスラム諸国に比べて西暦が多く使用されていました。
これは、バース党の「政教分離」の理念によるもので、もともとバース党が宗教・宗派を超えた民族団結を訴えていたものですから、たとえばホメイニ師のイランのように、イスラムだけを唯一の価値観にして他を排除するようなことはしていないわけです。
今回の武装組織が、ファルージャ近郊の「スンニ派とバース党のちょうど中間ぐらい」の思想の持ち主であるとすれば、ここで西暦を使うことは特段不思議ではありません。
>・三日後の4/11がシーア派の大切な日なのにイスラム歴ではない。
シーア派であれば、人質解放に際してもシーア派の指導者に頼るでしょう。スンニ派の犯行グループであれば、シーア派の祭日を重視するとは思えません。
たとえば日本の極左団体が、2月10日に何かの事件を起こすとして、翌日が「建国記念の日(紀元節)」ということを意識はしないでしょうし、それに関する事件でない限り、犯行声明にも出てこないでしょう。実際、極右と見られる朝日新聞社支局襲撃事件
(赤報隊事件=1987年)で、犯行が「憲法記念日」(5月3日)夜に行われたにも関わらず、犯行声明でこの日付を強調せず、「憲法」にも触れていなかった例もあります
(この事件の犯行声明では年号を「皇紀」にしていましたが)。
>・撮影したビデオが日本製ビデオ(SONY)。
世界に冠たる日本製の家電製品は、イラクに限らず世界中に行き渡っています(笑)。
「ソニー」は確かに比較的高価なほうに入りますが、「アイワ」製品は中東のどこでも目にするほどで、極端に限られた人にしか手に入らないというものではありません。
「舶来品」信仰のある日本人には理解しにくいのかもしれませんが、日本製品は「安くて高品質」のセールスポイントどおりです。
それでもなお、「舶来品」をイラク人が手にしているはずがない、と思い込むなら、問題の「バグダッド街道」を輸送するタクシー会社が、
イラク戦争前からアメリカのGM社製GMCという大型ジープを専用車として使っていることはどうなるんでしょうか?
……陸路で約1000km、しかも爆撃の穴の跡もあるこの悪路を突っ走れるのは、このジープだけだというのが単純な理由なんですけど。
NHKのクルーもたびたびアンマンからバグダッド入りする際には、このバグダッド街道を利用していますし、各国の中東歴訪でもチャーター機が使えるごく一部の首脳クラスを除けば、このバグダッド街道経由を選んでいます。
>・アルジャジーラTV曰く「このテログループは今まで全く聞いた事がなく、存在するか怪しいグループ」。
まったく無名のグループだったことはそのとおりです。
しかし、ソ連のアフガニスタン侵攻のときに、アメリカが肩入れしてアフガニスタンの武装イスラム勢力に武器を供与し、その後湾岸戦争でアメリカがサウジアラビアに入り込んだことからデビューした
当時無名の組織が「アルカイダ」でした。
「これまで活動していなかった」イコール「存在するか怪しい」というのなら、テロ組織が新たに生まれることもないわけで、それならよほど平和なんですけれど……。
>・政府に撤退・身代金などを直接要求する訳でなく「マスコミ」を使って「撤退」要求。
直接要求があると思うのは平和ボケでしょう。そんなチャネルを彼らが持っているはずがありません。交渉イコール接触ですから、それだけでも米軍のチェックポイントなどで捕まったり、あるいは銃撃・空爆を受けるリスクがあります。公のチャネルで要求できるぐらいなら、「ファルージャの現状」はもっと大きく世界に出ているはずです。
なお、あれだけの超大物「アルカイダ」でさえ、犯行声明はいつも「マスコミを使って」行っていることに注意。
>・アメリカでなくなぜか日本に撤退を求める犯行声明。
あまりにも強いアメリカをいきなり相手にせず、背後の同盟関係を揺るがせることを狙うのは、戦略的には当然のことです。
アルカイダによると見られるスペインの列車爆破テロが、結果的にアメリカにとって不利な方向に向いたのも、「なぜアメリカを標的としない?」という疑問になるんでしょうか。
実際、今日入ってきたニュースでは、列車爆破テロを契機に新政権となったスペインが、イラクからの撤退を前倒しすると発表しており、やはり米英には衝撃が走っています。
>・警察庁幹部談「期限を切って要求を突き付ける手口は、イスラム社会のやり方にはない」
「民間機をハイジャックしてビルに突っ込むという手口」も、イスラム社会のやり方にはありませんでした。
前例がないから、というのは想像力の欠如を露呈しているだけでしょう。所詮は、「地下鉄でサリンをまく」手口を、「やり方にはない」と予想もしなかった、その程度のインテリジェンスだと言えるかもしれません。
とはいっても、「警察庁幹部談」というのがあまりに不明な情報筋で、まともにコメントすべきかどうか疑問ではありますが。
>・PRビデオにしては「余りにも武装が貧弱」。
>・人質に対して室内でRPG-7(ロケット砲)を構えている。常識的にありえない。
これは、「とにかく持ってるものを全部出して見せた」と見るべきでしょう。
ロケット砲を構えているのも、まさかあそこで「ぶっ放す」ためではなくて、「これでアパッチを撃ち落してやる」というような「見せびらかし」にすぎないと思われます。
しかし、室内で構えて見せれば「常識的にありえない」と言われ、それならビデオに出さないほうが良いのかと思えば「武装が貧弱」と言われるのでは、この指摘を武装グループが読んだら「じゃあどうすればいいんだ」と困惑しそうです(笑)。
>・人質の後ろに兵を並べるのは南米のゲリラ組織のやり方で、イスラムはあんな撮り方をしない。
この指摘によれば、
イタリア人誘拐殺害やフィリピン人誘拐事件なども同じ構図の映像ですから、イタリア人やフィリピン人のケースも日本人人質同様「あんな撮り方をしない」と言わなければならないはずですが……?
イタリア人の場合は1人殺害されていますが、それでも「不審」を見るとすれば、アルカイダどころではない決死の超国家的陰謀ということになりますが、そんな国際的秘密結社による陰謀まで考える必要があるのでしょうか。
>・AP通信には高価な機材と知識が必要な「CD-R」でビデオデータを送付。
「フセイン像引き倒し」の直後、数分後にはクルド人勢力地域で「バイバイ・サダム」の歓声が上がりましたが、このときイラク国営のテレビやラジオは止まっていました。衛星放送などの国際的情報ラインが普及していなければありえない現象です。
イラクを「未開の砂漠にある貧しい国」と見るかぎりは理解しにくいでしょうが、あの「バグダッド街道」にしても、ヨルダン国境内よりもイラク国内のほうが道路が整備されているのはよく知られている事実です。経済制裁のもとでもオイル・マネーによる闇取引でフセイン政権下のイラクのほうが物資が豊富だったといわれるぐらいですから、欧米のものは何一つないと決め付けるのは思い込みによる誤認でしょう。
なお、サハフ情報相(当時)が、放送設備を大型にすると一回の空爆でダウンするから、小型分散するよう技術導入をはかったと戦後インタビューで語ったことは前に触れました。
またPCやその技能については、トルコのイスタンブール自爆テロ事件の容疑者に関連して、治安警察がネットカフェのコンピュータを押収したケース
(昨年11月)もあります。どうも「未開の砂漠」イメージが先入観になって決め付けている感がありますが……。
>・NHKのニュースで現地から書き込みがあったと思われる掲示板の映像が一瞬映った。
これは事実確認ができないと単なる怪情報にすぎません。
>・身分証明証ではない単なる朝日新聞の「入館証」がテレビに映された。
犯行声明を撮影した人が、日本語を読めないことの証拠ではないですか? 日本語が読める人が撮影に関わっていれば、そんなミスはしないでしょう。
朝日新聞社の「入館証」というのは現物もサンプルも見たことがないので分かりませんが、一回こっきりのゲストのための「ゲスト用の名札」とは別に、よく出入りする人には顔写真・氏名が入った「パスカード」が作られるのが、マスメディアに限らずどこの社でもセキュリティ上よく行われる方法です。
日本国内の運転免許証などは、わざわざ持っていったとは思えませんから、パスポートのほかに「身分証明」に見えるのは「入館パス」しかなかったのではないかと思います。
実際問題、私は国内でも運転免許証を持っていないので、国会図書館に行こうとして途中で警察官に職務質問されても、パスポートしか身分証明がなかったことがあります(笑)。パスポート以外に何か出せ、と言われると大変困るんですけれど、とくにレンタルビデオ屋さんとか
(住所がわからないからダメだって言われたり……ってこれではまるっきり『てけてけマイハート』のネタと同じになっちゃいますけど(笑))。
>・本来紛争地域では絶対に持ち歩かないパスポート(普通はパスポートのコピー)をなぜか三人とも持っていた。
いくら紛争地域でも、国境があるのに入国手続をコピーで済ませるという例は聞いたことがありません。
「通常はコピーを持って出歩く」というのは、現地入りして、たとえばバグダッドのアルラシッドホテルに入ってから、そこでコピーをとってから原本を日本でいうフロントに貴重品として預けて行動する、ということを意味すると思いますが、今回はどう考えても原本を持って入国したあと落ち着く前に誘拐されていますから、とても預けるようなところはなかったでしょう。
また、コピーで済まされるのは、いざというとき
(たとえば米軍から尋問を受けたとき)に、「それはバグダッド支局に問い合わせてくれ」と照会を要求できるだけのインフラが前提になるはずです。前線基地というべき支局を持っている大手メディアと違って、個人が個人の判断で動くフリージャーナリストの場合にも、そういった「常識」を適用してよいかどうかは、現場の経験がある人の意見を聞く必要があります。
>・一緒にさらわれた軍隊を送っている韓国の牧師はなぜか即解放。
韓国と日本を比較して、国際社会に対して与えうる影響力で決めたのではないか、という分析があります。
やはり軍隊を送っているイタリアでは、解放どころか1人が殺害されてしまいましたが、「即解放」でないからと不審の目で見られたら、殺害されたイタリア人は浮かばれないのではないでしょうか。
>・イラク入りしてすぐ拉致された3人、そしてすぐにテレビ局にVTRが届いた。
イラク入りは、現実的には「バグダッド街道」という陸路しかありません。イラク戦争前からマスメディア関係者はこのルートで入っています
(チャーター機を使える政府関係者は例外です)。
ある意味他のルートがないのですから、待ち構えていれば簡単なことではあります。
この3人だけが「イラク入りしてすぐ拉致された」わけではないことは、あまりに多くの国の人たちが誘拐されていることを無視した議論でしょう。
>・企業関係者、大手マスコミ、大手NGOがバグダッドにいるにもに拘らず、市民活動家とフリージャーナリストがターゲット。
ファルージャ近郊が「ホームグラウンド」の組織であれば、バグダッドまで行くのも命がけです。バグダッドは暫定行政当局の目も多く、また米軍のパトロールも厳しく行われていますから、そんなところに乗り込んでいくのは、相当の武装をしているグループでないと行く前に捕まりますし、それだけの武装があるなら誘拐よりも「ロケット砲を撃ち込む」攻撃に出るでしょう。
つまり、武装勢力とはいっても、そんなに重火器を大量に持っているテロリストグループというわけではなく、ほとんどは小火器しかなくて、ごく少数のロケット砲などを持っている、自警団がやや武力を増した程度の勢力ではないかと見られます。
また、「ソフト・ターゲット」という表現がされますが、「大手」はそれなりに情報と対策をとっていますから、狙われやすい弱さを突かれてしまったと言えるでしょう。
これは人質になった方に対する別の意味での批判にはなりますが、大手
(といっても、NGOなどについては具体的に何を指して「大手」と言うのかも疑問ですが)のようにきちんとした情報分析と対策をせずに、乗り込んでしまったから比較的やすやすと狙われてしまったということは言えます。
大人数でタクシーを連ねて一気に進んでしまうと、それだけ目について狙われやすいということも指摘されています。湾岸戦争後のメディア各社の取材チームも、大挙して入ると危険ということで、日付をずらして入り、バグダッドのホテルで合流する形を取るなどの対策を講じていました。今回3人プラス通訳、それに運転手というと計5人ですから、目立つ行動であったというのは別の意味の批判としてはあると思いますが、それが即座に不審の方向に持っていくのは無理筋というものでしょう。
>・イスラム社会ではアラーにしか許されない「焼殺」という脅し文句が使われた。
これは原文をきちんと訳してみないと何ともいえません。
かつてサハフ情報相が「バグダッドに米軍が入れば、アッラーは彼らを焼き殺すだろう」という表現をしましたが、「アッラーの名のもとに焼き殺す」という表現はありうる話で、そういった微妙な表現の差異を原文に当たらずにコメントすることはできません。
イスラムでは食用のヒツジを屠るときにも「アッラーの名のもとに」と唱えなければ、そのヒツジを食べてはいけないことになっています
(そのためサウジアラビアでは食用のヒツジを生きたまま輸入しています)。それだけ「アッラーの名のもとに」「アッラーが望むならば」が日常的に使われるため、犯行声明に出ていても、翻訳のときに日常的定型句として落としてしまうこともありえます。
適当な例ではないかもしれませんが、日本語の文章で「とりあえず」「そういえば」などは、間投詞として気軽に使われる場合、英訳の際には省いてしまうことがあります。日本語の「とりあえず重大視しない」という文章を翻訳する際、「とりあえず」に力点をおいて訳すか、それとも無視するかは、微妙な判断を迫られがちなところです。そういったアラビア語・イスラム特有の修辞の部分で翻訳がどうなのか、検討せずに「イスラム社会では〜」と断定的に言ってしまうのは姿勢として疑問を感じます。
また、「焼き殺す」というコメントは、イラク戦争中にフセイン政権の声明で頻用されましたが、それを真似た可能性もあります。一口に「イスラム」といっても、浸透度というか温度差というか、どの程度まで言葉や生活に出てくるかは、宗派によっても、個人によってもかなり違ってきます。バース党のように「極度に信仰で染めることはしない」勢力であれば、厳格な態度をとる宗派
(たとえばサウジアラビアなど)から見れば、イスラム的ではないように見えることもあるでしょう。
同時に、イスラム的修辞というのはすさまじく複雑な、一朝一夕に学べない膨大な知識体系でもありますから、凝った文章を作れるというのはそれだけの教養を必要とします。アルカイダのオサマ・ビン・ラディン氏など富豪の出ならともかく、本業が農業でとっさに武装しただけのグループであれば、それほど「学がない」ことも考えられます。
……日本の右翼で同じ「右」といっても、三島由紀夫と、そこらの街頭でじゃかすかBGM流しているのとでは雲泥の差ですから(苦笑)。
>・犯行グループの主張と被害者三人の主張が、なぜか「自衛隊撤退」で一致している。
なんだか犯行グループと被害者は絶対に意見が対立していないといけないように聞こえますが……。
フランスは戦争前から一貫してアメリカによるイラク占領に批判的ですが、そのフランス人ジャーナリストも誘拐されて、一時は刃物を首筋に当てられて殺されるかと思った、と語っています。
>・犯行グループが「ノーコイズミ」大合唱。
韓国人牧師や中国人労働者のケースとの違いでもありますが、それだけ「コイズミ」の固有名詞が、「自衛隊」や「アメリカへの協力」ということで、広く認知されていることがあるでしょう。
つまり、韓国の大統領や中国の国家主席の名前よりも、日本国首相の名前のほうがメジャーなのですね。サマーワであれだけPR活動していれば、それは有名にもなるはずですが……。「自衛隊の皆さんようこそ」と垂れ幕を作ったというような話、日本だけでなく現地も含めて広く報じられたはずです。ロイター通信の記事でもありましたが、「1945年以来初めて」という記事は欧米メディアでも大きく取り上げられましたから、「コイズミ」の固有名詞はそれだけ他の国よりも知られていて不思議はありません。
韓国の場合、大統領の罷免騒動もありましたし……ってそこまで国際報道を目にしているかどうかは分かりませんが(笑)。
しかし、アメリカのブッシュ、イギリスのブレア、日本のコイズミまではメジャーどころでしょうが、やはり軍を派遣しているフィリピンの大統領は誰か、と言われると日本人でも答えに窮する人のほうが多いのではないでしょうか。
>・人質の家族は米英諜報特殊部隊の救出作戦をなぜか拒否。
真偽不明です。
諜報や特殊作戦に関わる部隊が、「あんなにマスメディアに出てしゃべってしまう」家族に、あらかじめ作戦計画を告げるというのは、軍事的な戦術上も想像しにくいですから、わざわざ了解をとろうとしたのかどうかは非常に疑問です。
また、たとえ仮に「突入して救出」というプランがあって提示されたとしても、軍事的解決プランは血を見ることが多く、日本の家族にしてみれば拒否するほうが自然でしょう。
ここで「日本の」という限定がつくのは、それこそハイジャック事件が典型例ですが、日本では人質の犠牲の危険を伴う強行作戦には、政治的左右を問わず根強い反感があります。
日本国内で、名古屋の事務所にガソリンを撒いてたてこもった事件がありましたが、このケースでも警察は突入の前に説得を試み、最終的には事故のように爆発が起きて容疑者も爆死しています。長崎のバスジャック事件では突入で解決を見ていますが、これもタイミングをはかる意味もあって、相当の時間をかけました。「いきなり突入」は、日本人にとっては決して好まれないプランであることは、警察が国内で行う「作戦行動」を見ても理解できると思います。
まして、こういった「アウェイ」の事件で、そもそも反感を持たれている米英特殊部隊の作戦が成功するかどうか、家族にしてみれば疑問のほうが強く出ても当然でしょう。純粋に軍事的に見ても、今回の救出にあたって、日本政府はアメリカに協力を求めています
(小泉-チェイニー会談など)が、最終的にアメリカが動いて解決したようには、少なくとも現時点では見えません。
諜報・情報機関がどれだけの能力を持っているかは、最高レベルに近い機密事項ですから、米英の諜報・情報機関が「今回の人質事件でこれだけの情報を掴んでいた」と発表しないのも軍事常識から言って当然ですが、さてその「どこまで掴んでいるかは機密」のままで、「一切任せて欲しい」式に突入救出プランを提示されたとして、それを拒否するのは日本人の家族の感覚からすればむしろ自然ではないでしょうか。
これが米軍のリンチ上等兵のような、もともと軍人として行ったのであれば別ですが、しかしその場合はいちいち家族に承諾をとるような真似はしないはずです。
どうもこの「家族の拒否」云々は、日本人の思考の傾向も知らなければ、軍事的常識も持ち合わせていない人が作り上げた、急ごしらえのトピックスという感があるのは、どちらの側からみてもあやふやな土台に見えるからです。
なお、その他、「ヒロシマ・ナガサキ・平和憲法」に違和感というのも言われているようですが、イラクをはじめとする中東諸国では「ヒロシマ・ナガサキ」は非常に有名です。
NHKの平山健太郎元解説委員は著書で、1991年4月にテヘラン郊外でクルド独立のバルザーニ派事務所を訪れたとき、イラクが「ハラブジャ」の街で化学兵器を使ったことに抗議するポスターが「ハラブジャ」と「ヒロシマ」を組み合わせていたと書いています。
なお固有名詞の表記についてもあるようですが、
アラビア語は母音が「アイウ」の3種類しかない(エ・オがない)ため、たとえば「ホリエ」さんは「フリイ」と表記されます。しかも、母音を示す記号は表記しないという習慣がありますから、外来固有名詞の場合には長母音をわざわざつけて表記します。アラビア語名の「サダム」なら長母音も母音記号もつけずに子音だけ書きますが、日本人の「さだむ(定)」さんの場合は、サアダアムウというように全部に母音を付け足さないと書けないのです。
「ヒロシマ」の「ロ」は「ル」になるでしょうし、ヒアリングと文字表記の関係は私たちが見慣れない外国の固有名詞と同様ですから、「教養」が要求されるところです。
たとえば私たちは今回の救出に貢献したイスラム聖職者協会の方を「クベイシ師」と書いたり、「クバイシ師」と書いてみたり、メディアによって表記が異なります。校閲が入るメディアでさえこの状態ですから、一般的にニュースをさっと見るだけの人に聞いて書かせたら、「シ」が重なるために「クバイ氏?」という誤りだってないとはいえませんが、だからといって「これは日本人が書いたとは思えない」とは言わないでしょう。日本人の中でも「あまりニュースを見ない人だな」と言われることはあるでしょうが……。
……言葉の誤りだけでモノを言おうとすると、「コソビアン」「東チモリアン」「グレシャ人」と連発した大統領はアメリカ人の演説とは思えない、と断定されかねません(笑)。
平和憲法については、いきなり今回注目を集めたクベイシ師が、「日本の自衛隊は外に出してはいけないはずだ」と日本の報道陣に語っているように、「ヒロシマ」ほどではないにせよ、それなりに普及している知識です。これには、ロイターやCNNなど欧米メディアが、「自衛隊」について書くとき忘れずに「1945年以来〜」や「軍事作戦ではなく後方で〜」と書きつづけていることも関係しているでしょう。
なおアルジャジーラについても一部誤解があるようですが、カタールの「開かれた」政策で作られたこの衛星テレビ局は、フセイン政権下のイラクでも厄介者扱いされていましたし、アメリカからも取材拒否を受けるなど、報道を貫くあまりに各国政府の思惑としばしば対立しています。
イギリスのBBCもそうですが、報道の抑制はイタリア人殺害シーンのように「自主的判断」で行うのが普通で、「政府が要請すれば報道を止められる」という日本的「ムラの回覧板」とは全く違う世界の常識で動いています。
アメリカ政府がアルジャジーラを目の敵にしたのは、イラク戦争での惨状をそのまま流したからということもありました。
もちろん人命尊重のため、日本での誘拐事件に関する報道協定のような要請であれば、自主的に押さえてもらうことはできるでしょうが、今回の事件に関して報道を押さえることが人質の安全確保につながるとは思えないケースでは、押さえてくれというほうが無理です。
今回の事件について検討してみると、アルジャジーラが犯人が持ち込んだ映像を押さえてしまってわざと流さなかったら、犯人にしてみれば「情報操作の徴候」と受け取って、特殊部隊突入による危険と勘違いしてしまい、かえって人質を殺害して逃げる危険を高めたと考えられます。
日本における「誘拐事件の報道協定」は、「警察には知らせるな、知らせたら殺す」という犯人の常套文句に逆らわないよう装うためである、という簡単なことが忘れられているのではないでしょうか
(日本の誘拐事件でも、警察に知らせたことが明らかなケースや、犯人からの要求が来ないまま時間が経過して押さえる意味がなくなった場合は、すみやかに報道協定を解除して、逆に公開捜査に切り替えています)。
このあたり、「政府に不都合な話題は避けてもらえる」と思いがちな日本の「政治部」の発想とは訳が違います。犯行グループがクベイシ師の説得に応じた点だけでなく、他の人質事件の成り行きを見ていた様子がある点から見ても、アルジャジーラで情報をチェックし、同時に「交渉チャネル」に使っていたと考えるのが自然で、これは何も遠い中東でなくても、日本でも前にも書きましたが「警視総監がラジオで呼びかけた誘拐事件」の例もありますし、新聞広告欄の謎のフレーズが交渉を受ける合図になっていた例もあります。
また「日本の国民の反応」や「家族の声」も、やはりアルジャジーラが東京発で伝えています。川口外相のビデオメッセージもやはりアルジャジーラが収録して伝えました。
だからこそ、解放にあたったクベイシ師が「日本の外相の声明をテレビで見たが……」という反応を示すこともできたわけで、何か“電信”時代の感覚で分析しようとするのは、要するに年寄りの証拠ではないかとも思います。
その後人質となって解放された2人のケースでは、こちらは人質もかなり英語ができてアルジャジーラのインタビューを英語でこなしていましたが、犯行グループの尋問もあり、コミュニケーションがとれていたとNHKのインタビューに対して証言しています。
人質に取った以上解放はおかしいという点については、中国人や韓国人などほとんどの例で無事解放されているのまで疑うのかと逆に不思議でなりません。これはクベイシ師などイスラム聖職者
(ウラマー)が、絶対悪という表現こそ使わなかったものの、「民間人人質はイスラムに反する」と繰り返し訴えかけたことが大きいと見るべきでしょう。
バグダッド市民の反応でも見られるように、あえて言われなくても「人質」という手段には感覚的にも疑問を感じるイスラムの土台がありますから、そこへ聖職者が呼びかけを行ったことで、決定打、あるいは少なくともグループ内での揺らぎに反映したと見られます。武装勢力といっても、アルカイダのように大富豪の道楽で成り立っているわけではない、「自警団」的な組織であれば、あまり周囲の一般市民からも白い目で見られるような行動はつづけにくいはずです。
2004/04/17-2 天の声にも変な声?
2004/04/17 BREAKING NEWS:日本人2人無事解放
イラクのバグダッド近郊で行方不明になっていた日本人2人が、さきほど(日本時間16時すぎ)解放され、大使館に保護されたとNHKが伝えています。
解放された渡辺修孝さんは、NHKバグダッド支局の電話取材に対し、「食事は与えられた、脅されるようなことはなかった」と語った上で、犯人から「アメリカとイギリスはイラクの敵なので、これからも戦う。日本人はなるべくイラクに来ないで欲しい、なぜなら我々は友人を傷つけたくないからだ。自衛隊も出て行って欲しい」というメッセージを口頭で託された、と語っています。
2人はイスラム聖職者協会の事務所で保護され、健康だということです。
【ロイター=バグダッド発・米国東部時間04:50(日本時間17:50)】
Two Japanese Hostages Released in Iraq
Sat Apr 17, 2004 04:50 AM ET
By Haider Salah al-Din
BAGHDAD (Reuters) - Two more Japanese hostages were released in the Iraqi capital on Saturday in apparent good health, witnesses said.
A Reuters Television cameraman saw the two men being handed over to a Japanese delegation at Baghdad's Um al-Qura mosque. He said they looked in good shape.
The two are believed to be freelance journalist Jumpei Yasuda, 30, and Nobutaka Watanabe, 36, a former member of the Japanese military with ties to a civic group. Both were posted missing on April 14.
They were handed over to the Muslim Clerics Association, a Sunni group which has facilitated the release of several groups of foreign hostages in Iraq, including three other Japanese released on April 15.
"Two Japanese hostages were freed and handed over to the Japanese charge d'affaires," said Abdel Salam al-Kubaisi, a member of the association.
More than 40 foreigners have been taken hostage in Iraq. Most have been released. Both Sunni and Shi'ite leaders have appealed for kidnappers not to harm foreign civilians.
On Friday, a Canadian was delivered to a Shi'ite religious office in Najaf, and three Czechs were freed in Baghdad.
But several foreigners are still missing, including two U.S. soldiers, a U.S. contractor, a Palestinian, a Dane, a Jordanian-born businessman and three Italians.
A fourth Italian was killed by his captors who threatened to kill the other three if Italy did not withdraw from Iraq.
Late on Friday, a videotape of a man dressed in a U.S. camouflage uniform who identified himself as Private Keith Matthew Maupin was shown on Al Jazeera television.
His captors said on the tape they were willing to swap him for Iraqis held by U.S. forces. (Additional reporting by Seif Fouad)
(BBSでもご意見をいただいているので、今日は昨日につづき「イラク人質事件での被害者バッシング」について触れるつもりでしたが、予定を変更してお伝えしています)
2004/04/16 寛容と忍耐
"Are You Chinese?"(
海外旅行先で聞かれてむかつく日本人が多いと言われる質問あたりの挨拶)
なぜこの質問に反感を覚える人が少なくないのか、私などはほとんど理解不能なんですが……。結局は普段気づかない選民意識を突かれちゃうからかもしれません。
ところで、バグダッド周辺で新たに「連れ去られた」という日本人ジャーナリストの事件で、逃がそうとしたタクシー運転手が「2人は中国人だ」とかばった、というのを読んで、「日本国旅券も落ちたものだ」と思ってしまいました。
平和国家として西側先進国の中で唯一「敵を作らない」路線で来て、最前線の記者もアメリカなどに比べて危険も反感も少なかったのに、
全部台無しになった感があります。
まあ、こういう運命の一瞬のような深刻な事態はさておくと、単に観光旅行で行った先で知り合った人に聞かれたとき、別になんとも思いませんけれど……。「そう見えます?」とか、洒落っ気交えて聞き返すぐらいのゆとりがあっても良いのではないでしょうか。……もっとも、相手が日本語勉強していたりすると、会話のチャンス逃すとか、あるいは中国語勉強していて、いきなり中国語浴びせられるとか、そういう別の問題はありえますけどね(笑)。
「3人解放」で、また「一段落だ、めでたしめでたし」と水に流されそうなので、記録のために書いておきますが、解放の直前の次の記事、どう読みますか?
イスラム党書記長「人命最優先に」 日本人人質問題 【朝日】
イラクの統治評議会のイスラム教スンニ派議員で、武装勢力に影響力を持つイスラム党のモフセン・アブドルハミド書記長は14日夕、バグダッド市内の党本部で朝日新聞記者と会見し、日本人人質問題について、もし、武装集団による人質の殺害が避けられなくなったら、「人命を救うために日本政府は自衛隊を撤退させるべきだ」と語った。
イスラム党は米軍による掃討作戦でこれまでに700人の死者が出たファルージャで、武装勢力に働きかけて停戦交渉の仲介をしている。アブドルハミド書記長は、連続している外国人人質事件について、「民間人を人質にとるのはイスラムの教えに反する。私たちはイスラム宗教者委員会とともに機関誌やラジオ放送で人質の全面解放を求めている」と語った。
書記長は人質解放について日本人については「我々の呼びかけに基づいて、近く解放されると期待している」と語った。しかし、その一方で、「日本人を人質にとっている集団が、我々の働きかけに耳を傾けず、人質を殺すことにこだわれば、彼らはテロリストであり、犯罪人だ。その時は、日本政府は自衛隊を撤退させて、人質の生命を救うべきだ」と語った。
書記長は日本の自衛隊派遣について、「戦闘のために来ているのではなく、イラクの復興に来ているのだから、日本は友好国だ」と語り、日本の貢献を評価した。ただし、「自衛隊の規模はわずか550人ほどだ。飛行機1機で引き揚げられる規模ではないか」と語り、状況によっては、日本が掲げる「復興」よりも、自国民の人命尊重を最優先にすべきだとの考え方を示した。 (04/15 17:06)
この発言のポイントは、
「イラク統治評議会の議員」(=「一般市民」ではなく、新しいイラクを作るようアメリカから権限委譲を受ける側にいる)が、「日本の貢献を評価」していて(=自衛隊の派遣に反発してもいないし、実態を知っている)、その上でなお、彼にとっての自国の「復興」よりも、「
(日本政府は)自国民の人命尊重を最優先に」と語っているということです。
視野の狭い人は、「国内を取り締まるのが先で、余計なお世話だ」とまた頭の悪い話に陥りそうですが、
あれだけ殺戮が続き人命が軽くなってしまっているイラクの人から出た「人命尊重」の言葉の重みは、
自分は安全快適なところにいて「自衛隊は人道支援で行っている、テロリストの脅しに屈して撤退などできない!」と勢いだけで自国民を見殺しにしかねない空虚な放言をして平気な
「本来の意味の平和ボケ」の軽さとは比較にもなりません。
これを単なるリップサービスと思うなら、まあ妄想は自由ですから、と匙を投げたくもなりますが、少なくともイラクの責任ある立場にある人が、「自衛隊派遣の必要性に比べて、日本人の生命のほうが優先する」と言っているわけです。
冷たい言い方をすれば、この発言がすなわち「
(ヒューマニズム的な)人命最優先」という主張かどうかは不明です。というのは、これが「米軍-アメリカ人」だったらどうなるかは分からないからです。
しかし、少なくとも日本に関してイラクの将来を考えると、日本人の犠牲を出すぐらいなら自衛隊が撤退するほうがマシだ、という判断をしているのは確かです。つまり、イラクの中長期的未来を考えたとき、日本人の生命が犠牲になって日本との関係に懸念が生じるくらいなら、目先の貢献は認めていても、それでも自衛隊が撤退することでその事態を避けたい、という「現実的判断」とも考えられます。
そこまで「貢献先」から言われても、それでも留まるというのなら、もうそれは「イラクの人々のための人道支援」などではなくて、
単なる自己満足や頑迷な意地に過ぎないことになります。
「部隊撤退に圧力を」=家族に共感、解放決定−犯人グループが声明【時事通信 /Yahoo】
【アンマン15日時事】イラク・イスラム聖職者協会のスポークスマンは15日、バグダッドで行った記者会見で、犯人グループが日本人3人を解放した際に声明を出したことを明らかにした。
犯人側は声明で「日本の人々は東京でのデモで、アラー(神)の名を掲げてくれた。(われわれは)人質の家族の気持ちにも共感した。従って、日本の首相の無責任な発言にもかかわらず、3人の解放を決めた」としている。
また、一方で「われわれは日本政府が方針を変えて部隊を撤退させるまで、親愛なる日本の人々が圧力を掛け続けるよう求める」と自衛隊の撤退を要求した。 (時事通信)
[4月16日3時1分更新]
NHKでも、この声明は繰り返し紹介されましたが……。
民間人を拉致しておいて何を言うか、と反論したくなるのも事実ですが、しかし、「日本の首相の無責任な発言にもかかわらず」のくだりには、思わず頷いてしまいました。
解放されたからよかったものの、前日にイタリアの人質が殺害されたように、最初の一言を「普段の放言」の感覚で気楽に投げてしまうと、人質の生命を左右する結果になりかねません。
人質の引渡しに立ち会ったイラク・イスラム聖職者協会のクベイシ師は、NHKのインタビューに対し、
「3人は“解放されたのか”と聞き 私は“私の客人になったのです”と答えた」、と語っていますが、これはイスラムを知っていれば、アメリカ映画に良くあるように通りがかりの善人が拾ってくれたのとは訳が違う、とわかるはずです。
イスラムでは「敵の捕虜」と「客人」ではたいへんな違いですが、「捕虜」でさえも、
この人々は、立てた誓はよく果し、拡がり行く凶つ日(天地終末の日)を心から恐れ、(アッラーの)愛ゆえに、貧者や孤児や捕虜に食物を恵み、「わしらがこうしてお前がたに食物をあげるのは、ただアッラーのお顔(御嘉賞)欲しさの気持から出たこと。」
(井筒俊彦訳『コーラン』第76章第7節以下)
と言える人が、
「アッラーも、その日(終末の日)の禍いから守って下さろう」という
信仰深い人間の定義なのです。
まして「客人」となると、その責任は非常に重いもので、旧約聖書のロト
(ルート)の例にもあるように、客人に危害が加わるときは、命がけで一緒に守ってやるべきだ、そこから先はアッラーの思し召しだ、と言います。
……これと見比べると、普段は同朋意識の強い割には、
ムラの主流から離れて勝手に行った人に対しては冷たい口調が目立つ「日本人」とは、いったい何なんだろうと考えさせられます。
ムラのボス
ザルとしては予想された反応ですが、やっぱりだ、という報道が。
首相、被害者の発言に不快感 「自覚持ってほしい」【共同通信 /Yahoo】
小泉純一郎首相は16日昼、イラク人質事件で保護された被害者側からイラクでの活動継続希望が示されたことに対し「いかに善意の気持ちであっても、これだけの目に遭っても、これだけ多くの政府の人たちが寝食忘れて努力して、なおかつそういうことを言うのか。自覚をもってもらいたい」と強い不快感を示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
同時に自衛隊派遣による復興支援を継続する方針に「変わりない」と強調。バグダッド近郊で拉致されたとされる2人に関しては「まだ確認がとれていない」とした。(共同通信)
[4月16日12時2分更新]
それこそ「身をもって」被害を受けた人に対して、こういうことを言える思考回路というのは、「オレの言うことを聞けないのか!」と唸り声をあげているとしか思えません。
いつも失言を指摘されると、「全体の文脈を読んで判断して欲しい」と逃げ回るくせに、今回の人質の発言については、文字通り揚げ足とりに終止して「不快感」とは。
何もいまの「危険な状況」を体験した人が、
今日明日にもイラクに戻ると言っているわけではないでしょう。自覚もなにも、直接危険な目に遭っているんですから。状況が許すようになれば、ぐらいのことは「文脈から」判断できるのではないんですか?
逆に、「もう二度と支援活動はしません、安楽に暮らします」と言ってしまうほうが、被害者にとっては楽でしょうし、自然な感情だと思います。そう発言したとしても批判できないほどの経験をされた人が、それでも活動を続けたいというのは、崇高さを感じるところです。
これが軍隊なら、戦傷を負って後送されながらも「また出撃したい」と言うのと同じはずです。この首相、言葉の上では「特攻隊」を賞賛したがりますが、要するにそれは隊員の悲壮な決意と崇高な精神を評価しているのではなくて、
上官の命令にハイと従うという部分だけを誉めているんですね、きっと。
結局、彼にとっては、人質の安全よりも「自衛隊を意地でも撤退させない」ことが最優先で、それに影響が及びかねないことは何であっても「不愉快」だということでしょう。
コイズミならぬ「エゴ・イズミ」首相と呼ぶのが適当だと思います。
まだ川口外相の「助かった命だからぜひ大事にしてほしい。イラクの人たちのために貢献したいという気持ちは立派だが、大勢の人が支援して3人のきょうがある」という発言のほうが、人間の言葉として理解できるところです。
さて、「ムラの外」のニュース続報です。
【ロイター=ワシントン発・米国東部時間15:31(日本時間04:31)】
Bin Laden Message May Suggest Attacks Planned
Thu Apr 15, 2004 03:31 PM ET
By Tabassum Zakaria
WASHINGTON (Reuters) - A taped message purportedly from al Qaeda leader Osama bin Laden that sets a 90-day deadline for European countries to agree to a truce suggests his followers may have attacks planned in case the demand is rejected, some U.S. analysts said on Thursday.
The CIA said its technical analysis determined the voice was "likely" that of bin Laden on the audiotape aired by Arab television stations earlier in the day.
The message offered a truce with European countries if they stopped attacking Muslims, and vowed revenge on the United States for Israel's March 22 assassination of Sheikh Ahmed Yassin, leader of the Palestinian militant group Hamas.
"And the announcement of the truce starts with the withdrawal of the last soldier from our land, and the door is open for three months from the date of the announcement of this statement," said the voice on the tape.
Roger Cressey, a former White House counterterrorism official, said the assumption should be made al Qaeda had "a variety of operations in the hopper right now planned."
"The 90-day period expires, what does that mean?" he said. "I think law enforcement overseas and here should assume that there may be operations in the final stages of planning and they will just wait until after the 90 days and launch."
One U.S. intelligence official said it was not known whether al Qaeda had an attack planned for a specific timetable with a specific trigger, but that the group had threatened Europe in the past.
"They always have attacks in the works at some stage or the other," the official told Reuters on condition of anonymity. "But whether there is a specific one and a specific ticking clock is impossible to tell."
昨日最後にBBCから伝えた「オサマ・ビン・ラディン氏、ヨーロッパと休戦か?」というニュースの続報ですが、かなり懐疑的な分析です。まさか、休戦の範囲に入れてもらえなかったアメリカの分析だからというわけではないでしょうが……。
「同盟国」と「媚びるだけの飼い犬」は違うという実例。
【ロイター=ワルシャワ発・米国東部時間20:53(日本時間09:53)】
Poles Urge U.S. Against Najaf Assault -Report
Thu Apr 15, 2004 08:53 PM ET
By Tabassum Zakaria
WARSAW (Reuters) - Polish military officials responsible for security in part of southern Iraq are arguing hard against taking Shi'ite leader Moqtada al-Sadr by force in Najaf, a leading Polish newspaper said late on Thursday.
U.S. troops are now poised around Najaf, where Sadr's militia started an uprising earlier this month against the U.S.-led occupying forces, but America's top general said talks were under way to avoid a bloodbath in the city.
"Going into Najaf will be a disaster, it will make the main Shi'ite leaders turn away from us," Poland's Gazeta Wyborcza newspaper quoted a senior diplomatic source as saying. "If Sadr gives up on violence, we should be talking with him. We want to talk with anyone in Iraq who doesn't shoot at us."
Poland, a staunch ally of the United States, has 2,400 troops in Iraq and leads a multinational force based in Kerbala in the Shi'ite-dominated south-central zone of the country.
On Thursday Polish forces in Iraq said they were blindsided by the violence with Sadr's followers because U.S. officials did not warn them of actions that triggered the bloodshed.
Lt. Col. Robert Strzelecki, a spokesman for the Poles, said the U.S.-led Coalition Provisional Authority did not inform the multinational division in advance of a decision to shut down a newspaper associated with Sadr or about the detention of a key lieutenant to the Shi'ite cleric.
Asked if there was a difference of opinion with Washington over Najaf, Defense Minister Jerzy Szmajdzinski told the newspaper: "Our currency is dialogue and understanding. We do not need new troops in Iraq, just (new) political initiatives."
イラク南部に展開するポーランド軍当局は、目下問題のサドル師について、アメリカの軍事的解決という作戦に強く反対している、と伝えています。
聖地ナジャフで軽率な軍事作戦を展開すれば、サダム・フセイン政権が抑えつけてきたシーア派勢力がイラク全土で暴発する危険が高まるのは必至です。
アメリカが目の敵にした
サダム・フセイン政権は、イラク国内で多数派を占めるシーア派勢力を弾圧し、政教分離に近い「バース党」を率いていたわけです。その重石を取り除いて「解放者」になる、というのが単純思考のシナリオだったのかもしれませんが、実際はご覧のとおりの有様です。
ここで、アメリカ建国よりも古い歴史を持つ聖地ナジャフで、こともあろうに軍事作戦という事態が起きれば、イラクに限らずシーア派全体を敵に回す結果を招きかねません。
お隣のイラン、現在こそ穏健な協調路線を目指すべく、現政権は内外の攻撃をかわしつつ何とかしようと努力していますが、万が一かつてのホメイニ師時代のような強硬路線が主導権を握ってしまったら……。
ホメイニ師が「大悪魔である」と遺言したアメリカが、ナジャフで事を起こしたとき、隣の大国イランが黙っているという保証はどこにもありません。
現在のイランが、国内からも板挟みになりながらも穏健改革路線、つまりホメイニ師の教条主義とは正反対の現実路線を進めているのは、一つには
「アメリカがいつまでも中東に居座るのは困る」という戦略的判断もあります。
しかし、それにしても我慢の限度があるでしょう。アメリカが「サドル師を排除」する過程でナジャフを見境なく爆撃する、という事態になれば、「シーア派の聖地を大悪魔から守れ」と民衆レベルで突き上げが起きて、穏健路線を進める現政権そのものが吹き飛ぶおそれがあります。強硬派主導の政権が誕生し、聖地を大義に掲げて「解放戦争」に突き進むとなると、これはベトナム以上の泥沼になるでしょう。
イランが耐えて沈黙を守ったとしても、ナジャフやカルバラといった聖地で、軍事作戦を行えば、イラク全土のシーア派が敵に回ります。
サダム・フセインが冷遇し弾圧してきた多数派のシーア派が、サダム・フセインを排除したアメリカを敵として徹底抗戦ということになる。その上、全体を掌握するリーダーは不在のままですから、終結のシナリオもまったく見えません。
ポーランドが、アメリカの強硬路線とは真っ向反対、
「攻撃さえして来ないなら、誰とでも交渉する」としたのは、こういった先行きに対する憂慮がかなりあると見られます。
2004/04/15 《至急電》日本人人質3人無事解放、保護
日本人人質3人が解放され、イスラム聖職者協会が保護しました。その後、イスラム聖職者協会から日本大使館に連絡があり、指定されたモスクで日本大使館職員が3人の無事を確認、大使館で身柄を確保しています。
邦人3人保護した宗教委員会、「モスクで引き渡し」【朝日】
人質になっていた3人の日本人の無事な姿が衛星放送で世界に流れた。カタールのテレビ局アルジャジーラは15日、テロップで人質解放の速報を流した後、解放に尽力した。イスラム宗教者委員会の幹部と抱擁し、乾杯する3人の映像を発信した。3人は疲れた表情をみせながらも、けがをしている様子はない。拘束を伝える第一報に始まり、解放を最初に報じたのもアルジャジーラだった。
「アルジャジーラの特派員によると、3人の日本人の人質がバグダッド市内で解放された」
日本時間15日午後8時42分(バグダッド時間午後3時42分)、カタールの衛星放送テレビ局アルジャジーラはイラク戦争のバグダッド陥落について対談番組を放映中、日本人人質解放の速報を字幕で流した。
少しずつ状況が明らかになってくる。5分後、新たな字幕は「イスラム宗教者委員会が3人を保護しており、3人の健康状態は良好だ」と伝えた。
9時のニュースでは3人の元気な姿をトップニュースで伝えた。バグダッド市内の宗教者委員会の事務所内の黄色いソファに3人が座る。高遠菜穂子さんは赤いジャケット、郡山さんはカメラジャケット……。3人とも拘束された当時と同じ服装のようだ。表情に疲れが浮かぶ。
郡山さん、今井さんの順に宗教者委員会の関係者と握手し、抱き合って解放を喜んだ。高遠さんは解放された安心感か、こらえきれずに目頭を抑える。後ろから抱きかかえるように笑顔のイラク人が高遠さんをいたわる。3人はジュースで乾杯をかわした。
番組の中で、イスラム宗教者委員会幹部がインタビューに答えた。「イスラム宗教者委員会だけでなく、外国からの影響もあった。3人はモスクで引き渡しを受けた。すべての関係者に感謝したい」と話した。
3人と一緒にソファに座った幹部は、飲み物を手にリラックスした表情で話した。「宗教者委員会は直接人質解放の役割を果たしているわけではない。犯人グループにはメッセージを送った」と説明したうえで、「またファルージャに来て、いかに街が崩壊してしまったかを見てもらいたい。これからもイラクの子どもたちのために貢献して欲しい」と3人に語りかけた。
(04/15 21:42)
BBCやロイター電も速報で伝えています。
Japanese hostages freed【BBC】
Last Updated: Thursday, 15 April, 2004, 13:01 GMT 14:01 UK
Three Japanese civilians who were taken hostage in Iraq last week have been freed unharmed.
Japanese government officials confirmed the news, which was first reported by the Arab broadcaster al-Jazeera.
Aid worker Nahoko Takato, researcher Noriaki Imai and photojournalist Sochiro Koriyama were all in good health, al-Jazeera said.
Their kidnappers had threatened to kill them unless Japan pulled its 550 troops out of Iraq.
The hostages are now in the Japanese embassy in Baghdad. The female captive, Nahoko Takato, was shown in the al-Jazeera footage in tears.
The BBC's correspondent in Tokyo, Jonathan Head, says it is not clear what prompted their captors' change of heart.
The hostages' families, who have been camped in an office in Tokyo since their capture a week ago, waved and cheered as the news came through.
But the relief is tempered by Japanese media reports earlier on Thursday that two other civilians have also been taken hostage in Iraq, although the government said it was yet to confirm this.
The latest Japanese nationals to have reportedly been abducted are freelance journalist Jumpei Yasuda, 30, and Nobutaka Watanabe, 36, an anti-war activist and former member of the Japanese army.
【ロイター=ドバイ発・米国東部時間08:56(日本時間21:56)】
Three Japanese Hostages Freed, Safe But Shaken
Thu Apr 15, 2004 08:56 AM ET
By Ghaida Ghantous
DUBAI (Reuters) - Three Japanese hostages released in Iraq Thursday were shown on Arab satellite television and they seemed to be shaken but in good health.
Al Jazeera channel showed the two men and a crying woman who appeared from the footage to be a trio captured last week. Another two Japanese civilians have been reported missing near Baghdad and their fate is unclear.
The freed Japanese were shown meeting with the spokesman of the Muslim Clerics Association, Abdul Salam al-Kubaisi, and toasting him and each other with juice. The group has been negotiating the release of several groups of hostages.
Kubaisi said the Japanese were handed to him at a mosque a short time earlier. The channel said they were in good health.
"The association's request was met, but some foreign matters had delayed their release," he said on the Jazeera footage.
"Yesterday at 12:30 at night I received a signal the Japanese would be released tomorrow and I told them (abductors) to bring them to a specific place due to security concerns which may have hampered their release."
A Japanese Foreign Ministry official confirmed that three hostages had been freed and were safe.
The three Japanese taken hostage last week are Noriaki Imai, 18, who wanted to look into the effects of depleted uranium weapons, freelance journalist Soichiro Koriyama, 32, and aid worker Nahoko Takato, 34. Their captors had threatened to kill them if Japan did not withdraw its troops from Iraq.
Their families had clung to hopes that their loved ones would be released, even though the killing of an Italian captive Wednesday raised new fears for their safety.
Japan, like Italy, has been a staunch supporter of the United States in Iraq and both have resolved to stand firm.
But the worsening security situation in Iraq has fueled calls in Japan to withdraw its troops, whose activities are limited by Japanese law to "non-combat zones."
Japanese Prime Minister Junichiro Koizumi has repeatedly said he will not pull out the 550 Japanese soldiers engaged in a reconstruction and humanitarian mission in Samawa, southern Iraq, despite the militants' threats.
Kubaisi voiced concern about U.S. attacks on the besieged city of Falluja and invited the released Japanese to visit Falluja to witness events and convey them.
しかし、「ファルージャでの停戦継続」はあったものの、どこで何が起きるか分からない情勢下で、よく人質を安全にバグダッドまで輸送できたと思います。
潜伏先からバグダッドまで、米軍のチェックポイントでトラブルに巻き込まれる危険や、イラクの別のグループに襲われる危険もあるのに、あえてバクダッドまで連れてきて引き渡してくれたのは、生半可なことではなかったでしょう。
安全・快適なところにいて、「テロに屈することはない」と吼えるだけの人たち、あるいは安全なところから人質となった方々に対して罵声を浴びせるだけの連中とは、住む世界がまったく違うとしか言えません。
ここで、イラク・イスラム聖職者協会をはじめとする、困難な情勢にも関わらず外国人の解放のために力を尽くしたイラクの人々に尊敬と感謝の念を表明しておきたいと思います。
これは純粋に当たり前のことです。
しかし、至急電の行き渡った後、またぞろ「普通に読んでいたのではおもしろくない悪い癖」の持ち主が、素直に喜ぶこともせずにゴチャゴチャと妄想を言い始めるような嫌な予感があり、そういった頭の悪い人とは、きっちり一線を画しておきたいという思いも“不純物”に含まれています。
さて、「日本ムラ」の外で、世界は大きく動いています。BBCが速報で伝えています。
'Bin Laden' offers Europe truce【BBC】
Last Updated: Thursday, 15 April, 2004, 14:03 GMT 15:03 UK
Two Arab TV channels have broadcast an audiotape said to be from Osama Bin Laden in which he offers Europe a truce if it "stops attacking Muslims".
But in the tape, aired by al-Arabiya and al-Jazeera satellite channels, the voice said the initiative would not be extended to the US, Reuters reported.
The person on the tape also vowed to avenge Israel's killing of Hamas founder Sheikh Ahmed Yassin.
A European security source said the tape appeared to be authentic.
However, the source, speaking on condition of anonymity, said officials had not yet completed their evaluation.
The CIA in Washington said it was also still examining the tape.
Attacks 'payment'
The voice on the tape said that "the door is open" for about three months to forge a truce, although this could be extended.
The speaker used the Arabic phrase "mubadarat sulh", which can be translated as reconciliation initiative.
The initiative itself would then begin when "the last soldier" leaves "our countries", it added.
However, Spain, Britain, Germany and the European Commission have all rejected such a move, with EC President Romano Prodi saying there was "no possibility for negotiation under [a] terrorist threat".
The tape also refers to the 11 March bombings in the Spanish capital, Madrid, and the events of 11 September 2001.
It said the attacks were payment for US and Spanish actions in Iraq, Afghanistan and the Palestinian territories.
"What happened on 11 September and 11 March are your goods returned to you, so that you know security is a necessity for all," the voice said.
"Stop spilling our blood so we can stop spilling your blood."
Spain has been a prominent member of the US-led coalition in Iraq, although its new prime minister has said Spanish troops could be withdrawn if the situation in Iraq does not improve.
BBC diplomatic correspondent Bridget Kendall says the timing of the tape's release - if it is Osama Bin Laden - is significant, emerging shortly after US President George W Bush gave a major news conference defending US policies on Iraq and met Israeli Prime Minister Ariel Sharon in Washington.
The tape, she says, could be a propaganda attempt to counter what the US has said about events in the Middle East and Iraq.
It may also be attempting to exploit divisions between European nations and the US and drive a wedge between both sides at a time when tensions on both issues are very high, our correspondent says.
However, talk of a reconciliation initiative is unlikely to lead nations into withdrawing troops from Iraq, our correspondent adds.
2004/04/14 目立った者勝ち?
なぜ、こういう妙な解釈を試みたかといいますと……衒学から出たものと思います。普通に読んでいたのではおもしろくない。そういう悪い癖が昔からあるものです(宮崎市定先生あたりの挨拶)
イラク日本人人質事件、「長期化」ということで、焦る家族を脇において、情報が少ないのをこれ幸いと、さまざまな暴論が出始めているようです。
人質となった方々に対する誹謗中傷やバッシングが、どういう内容であっても暴論と断定するしかないのは、いちいち検討するにも値しないことですが、こういった暴論が出てくる原因を要すれば、「普通に読んでいたのではおもしろくない」というだけのことでしょう。
何しろ情報が少なく、玉石混交でしかも石が多いような状況です。少ない情報を「うまくつないで説明してみせる」話芸を見せたくなると、「陰謀」に持っていくのが安直で、しかも妖しい魅力を感じてしまうのではないでしょうか。
情報の少ないことにイライラするのは、人情として致し方ないところですが、苛立ったところで出てくるわけでもなく、まして「でっち上げ」の話芸で代えようというのはムチャクチャです。
さきほども「長期化」をカッコつきで書きましたが、まだ事件発生から1週間です。家族や関係者に対しては冷酷なようですが、分析者までも「長期」と呼んでしまうことには抵抗を覚えます。
日本国内の身代金目的誘拐事件でも、そう簡単に解放までたどり着けるケースは多くありません。あっけなく解決できるのは、よっぽど安上がりな2時間ドラマぐらいでしょう(苦笑)。
まして国際的な事件で、目的もまだハッキリしない、交渉チャネルも明確ではない事件で、そんなに早く解放されるとすればほとんど奇跡です。先週のアルジャジーラの放送は、その奇跡があるかもしれないと希望を持たせるものでしたが、結果として複雑怪奇な情勢に裏切られたと見なければならなくなりました。
手元の資料を見ると、三井物産・若王子マニラ支店長誘拐事件(1986年)で、解放されるまでには4ヶ月半を要しています。犯行グループの目的が明確で、交渉チャネルもあったのに、それでもこれだけの時間がかかっています。
日本国内の誘拐事件が比較的短期間に解決を見るのは、一つにはドラマと違って最悪の結末を迎えることが多いこと、もう一つには社会の監視体制とまでは言いませんが、そう人目につかずに潜伏できるような環境がないことが挙げられます。
この二つはまったく無関係のようですが、犯人が前例を見て犯行を計画する模倣性のために関連が生じやすいところです。つまり、誘拐事件の犯人にしてみると、「どうも人質から足がついて失敗することが多いから、さっさと殺してしまえ」という思考が働いてしまう。逆に、人質を殺害しないケースでは、目立って早い段階で保護され無事解決、という経過をたどることが多くなっています。
日本国内で長期化する事件では、殺害されてしまい、死体が発見されるまでに時間がかかるケースがあります。これは目的を突きつける誘拐事件というよりも、殺害が先にある行方不明事件と呼ぶべき例で、ルーシーさん殺害事件もそうでしたし、かの宮崎勤事件でも、被害者の死体という動かない証拠が出てくるまでに時間を要しました。オウム真理教による殺害事件もここに入れることになるでしょう。
つまり、日本国内のような人口過密の場所では、誘拐された被害者を長期にわたって生きたまま、どこか秘密の場所に隠しとおすのは難しいのです。例外中の例外としては、新潟の監禁事件が思い浮かぶぐらいです。
海外で「犯人がそこにいる」ことが明らかな事件、旅客機のハイジャック事件や、ペルーの大使公邸人質事件がここに分類されるでしょうが、それでも数日単位で解決を見ることは多くはありません。
今回の事件は、犯行グループや人質がどこにいるのかも分かりません。解放のための情報以前に、どこにどう言えばこちらの言葉が相手に伝わるのかも不明のままです。
ここの違いはイメージしにくいかもしれませんが、たとえば犯人との交渉で「何日付のA新聞広告欄にこう書け」という指示があれば、犯人や人質の居場所がまったく不明でも、伝えるチャネルが分かるだけまだ対処の方法があるということです。
さて、要求をつきつけてくる、目的をもった誘拐事件では、何にせよ「やり取り」が行われるのが普通です。
先に挙げた日本国内のケースで言うと、身代金を要求する場合、犯人は頻繁に電話をかけてくるなどして接触を試みます。それが逮捕につながるかどうかは別として、犯人にとってもやり取りを通じて目的を達成しようとするはずです。
身代金を要求してこない、殺害が先にある事件では、この接触がほとんど行われません。被害者に危害を加えることが目的で、殺害した時点で達成してしまったと考えれば、犯人が無理に危険をおかして家族などと接触しようと思わないのも説明できます。
このパターンから多少ずれるのは、快楽殺人に分類される事件で、殺害という主目的に加えてメディアに取り上げられることを喜ぶ自己顕示欲によるものですが、この種の異常犯罪は少数例です。
話を戻すと、要求をこちらに飲ませるための犯行であれば、要求をつきつけるだけで終わるはずはありません。「答えはまだか、早くしろ」と急かすなり、「一度で無理なら分割で応じる」と値切るなり、犯人にとっても目的を達するためにアクションを起こしてくるはずです。
これが単に殺害を最初から目的としているのなら、すでにファルージャで起きたように、ごちゃごちゃ言わずに遺体を引きずりまわしているでしょう。
この情報の少なさに、家族や関係者でなくても苛立つのは、犯行グループが最初の犯行声明の映像の後、沈黙してしまっていることがあります。「24時間以内に解放」の声明の真偽も問題ですが、どちらであってもその後の沈黙が長すぎます。「解放」が犯行グループとは関係ない、ニセの声明であったなら、それを取り消す声明が出てきそうなものです。
こちらが要求を聞かないので督促するなら、それはそれでメッセージが出てくるはずです。ハイジャック事件で見られたのは、「何時間以内に要求を聞かなければ1人ずつ殺す」というような時間を切った通告でした。
かといって、ファルージャのアメリカ人殺害のように、最初から殺すつもりだとも思えません。日本政府が最初から要求を突っぱねたた